准ルート②
文字数 2,519文字
准先輩は唐突に私の手を取って走り出した。大勢の人の中をかき分けていくのはとても気持ちが良かった。
由紀「思い違いだったらすみません。色んな女の子と居ても准先輩ちっとも楽しそうに見えないから。知ってました? プリンセス制度の皆と居る時の准先輩すごく楽しそうなんです。心の底から楽しいって思っているのが伝わってくるんです」
もしかしたら――その後に言いかけた言葉が気になった。けれど、そのことに触れられない空気があった。
……まぁあんなこと言ってしまったけれど准先輩のことが気になるっていうのは本当のことなので、自惚れてくれても期待してくれてもいいのである。ただ私が素直になれないだけで手だって繋ぎたいと思っていた。
准先輩がん、と手を差し出してくれ、私はその手の上に自分の手を重ねて置いた。
私だってちゃんと手を握ろうと思ったのだ。しかしなぜか緊張していたからかなのか気が付くと手を置いてしまっていたのだ。うぅ……恥ずかしい……。きっとまともに手も繋げないと呆れられているに違いないと思うとまともに顔が見れなかった。
だけど准先輩はそのまま握り返してくれて、不自然な形ながらも手を握ることが出来た。
准先輩はかっこいい、改めてそう思った。今日一日でどれだけ准先輩のことを知っただろう。どれだけ好きなっただろう。
肩を並べて歩きながらちらちらと隣の彼のことを伺っていた。そう思うと突然かっこよく見えてしまうし、心臓がバクバクと鳴り始めてしまうのだった。