准ルート②

文字数 2,519文字

智「由紀さん、一緒に帰りましょう」

由紀「あっ、智ちゃん。うんいいよ、帰ろう」

准「だめだめ、智ちゃん。由紀ちゃんは俺と帰るんだから。ね?」

由紀「……なんで私なんですか、ほら、そこで一緒に帰ろうって待っている女の子が――」

准「俺は由紀ちゃんと帰りたいんだけどなぁ、だめ?」

由紀「だめじゃないですけど――」

准「んじゃ、帰ろっか」

由紀「わっ、ちょ、准先輩!」

准先輩は唐突に私の手を取って走り出した。大勢の人の中をかき分けていくのはとても気持ちが良かった。

* * * * * * * * * * * * * *

准「その顔は何で構ってくるんだって顔だね。それはね、君のことが気になるから」

由紀「え……気になるって……」

准「人としての興味かな、君といると面白い世界が見られそうな気がしてる。君のことをもっと知りたいから一緒に帰りたいんだ」

由紀「そんな……准先輩に興味を持って貰うほど私なんて面白くないですよ」

准「面白いよ、君は面白い。今朝君に言われた言葉が胸に刺さってさ。あんなこと人に言われたの初めてだったから腹立ったけどまあでも俺のこと考えてくれてるんだなって思うと可愛いって思ったんだよね」

由紀「はっ……!? かわいいって……!」

准「俺の事を心配してくれる由紀ちゃんが可愛いってこと。ねえ、なんで俺のことを気にかけてくれてるの? 何で今朝彼女は1人にしろだなんて言ったの?」

由紀「そっ、それは普通だからです! 今の世の中では彼女は1人なのが普通なんです! 何人もいる方がおかしいんですから!」

准「んー、でもさぁ、それって俺の勝手だよね? 誰と何人付き合おうが人の恋愛事情なんだから君には関係なくない?」

由紀「それは……准先輩がそれでいいならいいんですけど、でも、このままじゃ准先輩が幸せになれないから」

准「……なにそれ、俺が幸せになれないってどういうこと。なんでそんなの分かるの」

由紀「思い違いだったらすみません。色んな女の子と居ても准先輩ちっとも楽しそうに見えないから。知ってました? プリンセス制度の皆と居る時の准先輩すごく楽しそうなんです。心の底から楽しいって思っているのが伝わってくるんです」

准「は、あいつらと居ることが楽しい訳ないじゃん。女の子と居るのが楽しいに決まってるし」

由紀「女の子と居る時の准先輩はどこか上の空で、感情がないように思います。それって、楽しくないからですよね。どこか無理をしていますよね」

准「はぁ……驚いた。なんで俺が無理してるって分かっちゃったの? 正直ビックリなんだけど」

由紀「ふふっ、分かりますよ。准先輩と入学時に出会ってからずっと准先輩と一緒に居ることが多かったから。面白そうにしてるな、とかくらいなら多分分かります」

准「あははっ、もしかしてそれって告白? そうとしか聞こえなかったんだけど?」

由紀「ちがっ……! あああ! そんなつもりじゃ――って何なんですかそのニヤニヤした顔は! すごくムカつく!」

准「ふーん? 由紀ちゃんってからかうと面白いなあ。俺のこと分かるってんならさ、今俺が何考えてるか分かる?」

由紀「う、うーん……准先輩の考えてること……うーん……あ、女の子のお尻揉みたいとかですか?」

准「ぷっ……あははは! なにそれ最高! やだなー、いくら俺でもいつもそんな不埒なことばっかり考えるわけないじゃん。むしろとっさにそんな考えが出てきちゃう由紀ちゃんがエッチだよね?」

由紀「むっ……それを言うならこういうイメージしか浮かばない准先輩が悪いんです。日頃の行いのせいでこういうイメージを植え付けられるんです!」

准「まあそれもそっかー。俺=尻フェチ、みたいな? 響きで言えば尻マスター? うわ、エロっ、なにそれエロっ」

由紀「……で、今は何を考えているんですか? 考えても分かりませんでした。教えてくれませんか?」

准「君と居ると飽きないなって思ったの。面白いんだよね。退屈させてくれなさそう。……もしかしたら――」

由紀「? 准先輩?」

准「……ううん、なんでもない。さ、そろそろ帰ろうか」

由紀「あ、はい……」

もしかしたら――その後に言いかけた言葉が気になった。けれど、そのことに触れられない空気があった。

准「……あ、そうだ。せっかく一緒に帰ってるんだし手でも繋ぐ? ていうか俺が由紀ちゃんと手繋ぎたいな」

由紀「えっ、ええっ!?」

准「あ、もちろん嫌じゃないならだけどね。……だめ?」

由紀「だっ、だめじゃないです! 突然のことでビックリしちゃって……あのっ、繋いでみたいです……!」

准「ん、素直じゃん。これは由紀ちゃんに惚れられてるって自惚れてもいい感じ? 期待しちゃってもいい?」

由紀「……准先輩って相当なナルシストなうえ頭が幸せですよね。羨ましいです」

准「それ褒めてる? 頭が幸せっていうのは恋愛脳って解釈して! 自分大好きなのは否定しないけど」

……まぁあんなこと言ってしまったけれど准先輩のことが気になるっていうのは本当のことなので、自惚れてくれても期待してくれてもいいのである。ただ私が素直になれないだけで手だって繋ぎたいと思っていた。

准「それで、俺は由紀ちゃんと手を繋ぎたいわけですが?」

准先輩がん、と手を差し出してくれ、私はその手の上に自分の手を重ねて置いた。

准「…………」

由紀「えっ……! うわわっ、すみません! えっ、えっと――」 

私だってちゃんと手を握ろうと思ったのだ。しかしなぜか緊張していたからかなのか気が付くと手を置いてしまっていたのだ。うぅ……恥ずかしい……。きっとまともに手も繋げないと呆れられているに違いないと思うとまともに顔が見れなかった。



だけど准先輩はそのまま握り返してくれて、不自然な形ながらも手を握ることが出来た。

准「んじゃ、仲良く手を繋いだことだし、帰ろっか。家まで送ってくよ」

由紀「あ……ありがとうございます」

准先輩はかっこいい、改めてそう思った。今日一日でどれだけ准先輩のことを知っただろう。どれだけ好きなっただろう。



肩を並べて歩きながらちらちらと隣の彼のことを伺っていた。そう思うと突然かっこよく見えてしまうし、心臓がバクバクと鳴り始めてしまうのだった。

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登場人物紹介

和光由紀 

ヒロイン、だけど周りの女装男子が可愛すぎて霞む。転校生。Gカップ

東十条 静香ちゃん

全6話構成。身長が低いコンプレックスに悩む。親に放任されつつ、監視されている。庭園でお茶したり、読書することが好き。

能代 准ちゃん

全5話構成。学園の女子人気殆どを占める。女の子が好きで、彼女がたくさんいる。楽しいわけではない。

豊前ミカゲちゃん

全8話構成。弓道部のエース。静香様の下僕。静香様をお慕いしている。少女漫画や、ファンシーなものがすき。性同一性障害の気がある。

千倉玲ちゃん

全7話構成。おっぱい魔人。常におっぱいのことを考えている。由紀のおっぱいがお気に入り。

恵村和海ちゃん。

全6話構成。純情少年。喋る猫がでてくるなんかよく分からない個別。

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