静香ルート④
文字数 1,133文字
私は昼休みにこの庭園で過ごすことが当たり前となっていた。本を読んだり、お昼寝をしたりする。ここには誰も訪れることがないし、私と静香様、たった2人だけの穏やかな時間が流れていた。
いつものようにお昼寝でもしようかと思っていた私は、静香様に声を掛けられた。
私は、静香様がたまに見せる寂しそうな表情をしていることに気付いた。
……最悪だね。もうあいつの顔も見たくない。父親としてじゃなく、人として嫌い。僕がこの世界で生きていく限り、あいつの名前が付いて歩くのも最悪。……でも、仕方ないんだよね。どうしてもあいつから逃げられないから
この世界ではあいつの名は知れ渡っている。どこへ逃げようとあいつの監視の目から逃げられない。僕がこうしてあんたと話していること、ここに居ることでさえも全て見透かされていて、何でもあいつに伝えられてしまうような気がする
悔しいんだよね。僕はこうやって強がっていてもあいつの監視下に置かれていて、あいつの手の平の上で踊らされている。僕はあいつの財力がないと生きていけていないし、結局は何も出来ない子供なんだって気づかされるんだ。
私は静香様の震える小さな体をぎゅっと抱きしめた。
そうして、私は静香様を抱きしめていた。5分以上経ってしまったけれど、何も言われなかった。てっきり怒られると思っていたけれど、そんなことはなかった。