静香ルート④

文字数 1,133文字

私は昼休みにこの庭園で過ごすことが当たり前となっていた。本を読んだり、お昼寝をしたりする。ここには誰も訪れることがないし、私と静香様、たった2人だけの穏やかな時間が流れていた。

いつものようにお昼寝でもしようかと思っていた私は、静香様に声を掛けられた。

……ねえ、あんた最近変わったことはなかった?
変わったこと……ですか? いえ、別にいつもどおりですけど……何かあったんですか?
何も無かったならいい。ただ、今日僕の父……東十条の代表から電話があった。そして、あんたの事を聞かれた
私の事を聞かれた……? 何を聞かれたんですか?
……あんたと僕が既に男女の仲でもう済ませちゃったのかってこと
なっ……! というか、まだ静香様と私はそういう関係では――
分かってる。あいつは女を性玩具にしか思っていないからそういう感想しか持てないだけ。ほんと最低なやつ

私は、静香様がたまに見せる寂しそうな表情をしていることに気付いた。

……聞いてもいいでしょうか
なにを?
ご両親と仲良くないんですか?
……最悪だね。もうあいつの顔も見たくない。父親としてじゃなく、人として嫌い。僕がこの世界で生きていく限り、あいつの名前が付いて歩くのも最悪。……でも、仕方ないんだよね。どうしてもあいつから逃げられないから
……どうして、逃げられないんですか?
この世界ではあいつの名は知れ渡っている。どこへ逃げようとあいつの監視の目から逃げられない。僕がこうしてあんたと話していること、ここに居ることでさえも全て見透かされていて、何でもあいつに伝えられてしまうような気がする
静香様……
悔しいんだよね。僕はこうやって強がっていてもあいつの監視下に置かれていて、あいつの手の平の上で踊らされている。僕はあいつの財力がないと生きていけていないし、結局は何も出来ない子供なんだって気づかされるんだ。
あんたのことだって知られていた。あんたに何かあったらどうしようって思うと怖い。僕に関わったせいであんたまで巻き込まれてしまうかもしれない。

私は静香様の震える小さな体をぎゅっと抱きしめた。

……なにしてるの
すみません。でも、こうしたかったんです。少しだけこうさせてください
……5分だけだからね。それ以上したら変態扱いするから
はい
……あんたは、あいつみたいに僕を置いて居なくなったりしないよね
はい。私は、ずっと静香様の隣に居ます。居なくなったりなんかしません
……そう。あんた、温かいね。他人の体温ってこんなに温かかったんだね。知らなかった
私でよければ、ずっとこうしていてあげます
ふん……生意気

そうして、私は静香様を抱きしめていた。5分以上経ってしまったけれど、何も言われなかった。てっきり怒られると思っていたけれど、そんなことはなかった。

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登場人物紹介

和光由紀 

ヒロイン、だけど周りの女装男子が可愛すぎて霞む。転校生。Gカップ

東十条 静香ちゃん

全6話構成。身長が低いコンプレックスに悩む。親に放任されつつ、監視されている。庭園でお茶したり、読書することが好き。

能代 准ちゃん

全5話構成。学園の女子人気殆どを占める。女の子が好きで、彼女がたくさんいる。楽しいわけではない。

豊前ミカゲちゃん

全8話構成。弓道部のエース。静香様の下僕。静香様をお慕いしている。少女漫画や、ファンシーなものがすき。性同一性障害の気がある。

千倉玲ちゃん

全7話構成。おっぱい魔人。常におっぱいのことを考えている。由紀のおっぱいがお気に入り。

恵村和海ちゃん。

全6話構成。純情少年。喋る猫がでてくるなんかよく分からない個別。

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