准ルート③

文字数 1,569文字

准「今日はありがとう、楽しかった。由紀ちゃんと居ると退屈しないっていうか、素で居られるかも。君って貴重な人間だよね」

由紀「こちらこそ送ってくれてありがとうございました。私も准先輩と居ると楽しいですよ」

准「ほんっと、君みたいな子が彼女だったら良かったのにな……なんて」
由紀「え……」

サァァと私達の間に一陣の風が吹いた。もうすっかり冷たくなった秋の風が頬をかすめていった。

今のはそういう意味って受け取ってもいいのだろうか。それとも、准先輩の得意な私をからかって遊んでいるんだろうか。表情からその真意は計り知れなかった。


准「彼女になってくれない? それとも、こんな俺じゃ嫌?」

由紀「……い、嫌じゃないです……けど、私をからかってるんじゃ――」

准「……あっそー、信じてくれないなら強硬手段に出るけど?」

由紀「強硬手段って……! きゃっ!」 

准先輩の顔が目の前にあった。それは、少し近づくと鼻と鼻、唇と唇がくっついてしまいそうな距離で――

由紀「――って、なにするんですか!」

 准「なに、って……ここでメチャクチャに犯して近所を歩けなくしてあげる、とか?」

由紀「さ、最低! 離してください!」

准「んー? やーだ、離さない。逃がしてあげない。――ねえ、このまま君に顔を近づけるとキスしちゃうね?」

由紀「……はい」

准「いいの? 嫌なら嫌って言ってもいいんだよ? もうこういうことしないから」

由紀「嫌じゃない、です……。けど、遊びでするキスならやめてください」

准「遊びじゃないよ、今から本気で君にキスをする。キスしたいからキスする。いい?」

そう言った准先輩の目は本気なことが伝わってきて、私の事を好きだと言ったのは嘘じゃなかったんだと思った。准先輩の目には私が映り、その瞳の中の私は嬉しそうに目を閉じて彼の唇を待っていた。そして、ゆっくりと顔が近づき、唇と唇がちょこんと重なり合った。


…………。なんだか意外なキスだった。准先輩のことだからもっとねっとりじっとりした熱烈なキスをしてくるものだとばかり思っていた。

准「…………」

由紀「…………」

お互い気まずくなって無言の時間が流れる。ていうか何でキスをした本人が目をぱちくりさせて意外そうな顔をしているんだろう。

准「……あれ、何かてっきり最低って言って俺の頬をぶって走り出すのかと思ったんだけど」

由紀「やだなぁ、いくら私でもそんな漫画みたいなことしませんよ。ていうか何でそんな発想が――ってあ、もしかして昔誰かにやられたんですか?」

准「あははは……昔の傷を掘り起こさないで。色々と思い出す……」

由紀「図星だったんですか、すみません……」

准「いや、いいんだけどね。……ねえ、聞いてもいい?」

由紀「はい、なんですか?」

准「今のキスって俺を受け入れてくれたってことだよね? つまりはそういうことだよね? 勝手にしたわけじゃないよね」

由紀「は、はい……」

それは、ムードに流されたとか逃げる術がなかったとかじゃなくて、好きだから受け入れたキスだった。そういうこととはつまり好きということで、そういうことなのかといわれたらそういうことだと思う。

准「なんで? 遊びでするキスは嫌なんじゃなかったの?」

由紀「それは――さっきのキスが遊びじゃないって、本気だって分かったからです。准先輩の顔が近づいてくる時思いました、決してからかってなんかないって。だって目が本気だって伝わってきたんです。ふふっ、真面目な顔見ちゃいました」

准「えっ、うそっ、俺そんな顔してたの!? 最悪……全然クールじゃないじゃん」

由紀「かっこよかったですよ。私大好きですあの顔。でも、何で准先輩が女の子にモテるのかまた1つ分かりました。キスする度にあんなかっこいい顔してたらそりゃ女の子たちが離しませんよね……」

准「……そんなの、してないよ」

由紀「え……?」

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登場人物紹介

和光由紀 

ヒロイン、だけど周りの女装男子が可愛すぎて霞む。転校生。Gカップ

東十条 静香ちゃん

全6話構成。身長が低いコンプレックスに悩む。親に放任されつつ、監視されている。庭園でお茶したり、読書することが好き。

能代 准ちゃん

全5話構成。学園の女子人気殆どを占める。女の子が好きで、彼女がたくさんいる。楽しいわけではない。

豊前ミカゲちゃん

全8話構成。弓道部のエース。静香様の下僕。静香様をお慕いしている。少女漫画や、ファンシーなものがすき。性同一性障害の気がある。

千倉玲ちゃん

全7話構成。おっぱい魔人。常におっぱいのことを考えている。由紀のおっぱいがお気に入り。

恵村和海ちゃん。

全6話構成。純情少年。喋る猫がでてくるなんかよく分からない個別。

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