准ルート③
文字数 1,569文字
サァァと私達の間に一陣の風が吹いた。もうすっかり冷たくなった秋の風が頬をかすめていった。
今のはそういう意味って受け取ってもいいのだろうか。それとも、准先輩の得意な私をからかって遊んでいるんだろうか。表情からその真意は計り知れなかった。
准先輩の顔が目の前にあった。それは、少し近づくと鼻と鼻、唇と唇がくっついてしまいそうな距離で――
そう言った准先輩の目は本気なことが伝わってきて、私の事を好きだと言ったのは嘘じゃなかったんだと思った。准先輩の目には私が映り、その瞳の中の私は嬉しそうに目を閉じて彼の唇を待っていた。そして、ゆっくりと顔が近づき、唇と唇がちょこんと重なり合った。
…………。なんだか意外なキスだった。准先輩のことだからもっとねっとりじっとりした熱烈なキスをしてくるものだとばかり思っていた。
お互い気まずくなって無言の時間が流れる。ていうか何でキスをした本人が目をぱちくりさせて意外そうな顔をしているんだろう。
それは、ムードに流されたとか逃げる術がなかったとかじゃなくて、好きだから受け入れたキスだった。そういうこととはつまり好きということで、そういうことなのかといわれたらそういうことだと思う。
由紀「それは――さっきのキスが遊びじゃないって、本気だって分かったからです。准先輩の顔が近づいてくる時思いました、決してからかってなんかないって。だって目が本気だって伝わってきたんです。ふふっ、真面目な顔見ちゃいました」