玲ルート④

文字数 1,488文字

玲「由紀ー? ……玲をほったらかしにしておくなんてダメな子なんだからー、もうっ!」

由紀がおトイレに行くと言って席を経ってから20分くらい経った。そろそろ戻ってきてもいい頃合いだと思うけれど、帰ってくる気配がない。もう少しで昼休み終了のチャイムが鳴ってしまうというのに一体どうしたんだろう。荷物をここに置いたまま戻ったなんて可能性はないこともないだろうけれど多分その線はないと思う。つまり、だ。

玲「これは事件の匂いがする……! それも一大事件だよ! ねっ、ミカゲちゃん!」

ミカゲ「はい? なんですかいきなり。いきなり振られても困ります」

玲「事件の匂いだよミカゲちゃん! ……あれ、ていうか何でここにいるの?」

ミカゲ「それはここが静香様を見るのに一番いいベストポジションだからです。静香様は1人になりたいと仰って私を傍に置いてくれないんです。そこで私は静香様の見える一番いい場所を探したのです。ほら、見て下さい。あそこで愛しのバラを見る慈愛に満ちたあの表情、静香様の背後に聖母マリアが見えます。ああっ……! 今日も静香様は美しいです……!」

玲「わー、ミカゲちゃんの静香ちゃん愛はすごいなー、玲感動しちゃうー」

我ながら見事な棒演技だった。大根役者もびっくり。

ミカゲ「……で、千倉様がさっきから仰っている事件とはなんなのです? 私でお力になれることがあるならお手伝い致しますが」

玲「わぁ、ほんと!? ミカゲちゃんが手伝ってくれるのなら心強いかも! えっとね、かくかくじかじか~で由紀が居なくなっちゃったの! どうしようミカゲちゃん」

ミカゲ「とりあえず落ち着いてください千倉様。ご安心を――と言いたいところですが残念ながら由紀様をお見かけして居ないので力になれそうにありません、すみません」

玲「そっかぁ……うーん、やっぱそう簡単には情報は集まらないかぁ」

ミカゲ「由紀様はお見かけしていませんがここへ来る途中千倉様のファンとして有名なあのお嬢様が数人の男達を連れて歩いておりました。なにやら不穏な空気でした。これは無関係ではないのではないですか?」

玲「うーん……それってどういうこと?」

ミカゲ「……いえ、分からないのならばいいのです。私には関係のなき事。ですが貴方は少し人を疑った方がいい。いつまでもそうやって猫を被っていては守るものも守れませんよ」

玲「玲は猫なんて被ってにゃいもん! ミカゲちゃんに玲の何が分かるの……」

ミカゲ「ミカゲちゃんは何でもお見通しなんです。なんたって静香様の下僕だから。えへ」

玲「なにそれ、ぜんっぜんかわいくない! ミカゲちゃんかわいくない!」

ミカゲ「何とでも仰って下さい。私はもともとこういう人間なんです。あっ、静香様が移動なされる! 私も見守りしなくては……待ってください静香様!」

まるで瞬間移動でもしたかのような光の速さでミカゲちゃんは居なくなった。

ぽつんと玲だけがその場に残されてしまった。


いつの間にか昼休みが終わったようで運動場からどこかのクラスが体育をする声が聞こえてきた。



1人になった玲はなんとなく空を見上げてみる。空は青く澄んでいて、雲がゆっくりと流れていた。いつも通りのお昼の空。空を見上げながら考えてみる。

玲「猫かぶり、かぁ……そうなのかなぁ」

猫を被っているつもりではないけれど可愛い玲であるために封印したことがある。

きっとミカゲちゃんはそのことを言っている。可愛い自分を犠牲にすることと大好きな女の子を守れる力を天秤にかけたら――。

玲「……うん、由紀のところに行かなくっちゃ。待ってて、玲のお姫様。必ず救い出してあげるんだから――!」

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登場人物紹介

和光由紀 

ヒロイン、だけど周りの女装男子が可愛すぎて霞む。転校生。Gカップ

東十条 静香ちゃん

全6話構成。身長が低いコンプレックスに悩む。親に放任されつつ、監視されている。庭園でお茶したり、読書することが好き。

能代 准ちゃん

全5話構成。学園の女子人気殆どを占める。女の子が好きで、彼女がたくさんいる。楽しいわけではない。

豊前ミカゲちゃん

全8話構成。弓道部のエース。静香様の下僕。静香様をお慕いしている。少女漫画や、ファンシーなものがすき。性同一性障害の気がある。

千倉玲ちゃん

全7話構成。おっぱい魔人。常におっぱいのことを考えている。由紀のおっぱいがお気に入り。

恵村和海ちゃん。

全6話構成。純情少年。喋る猫がでてくるなんかよく分からない個別。

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