玲ルート④
文字数 1,488文字
由紀がおトイレに行くと言って席を経ってから20分くらい経った。そろそろ戻ってきてもいい頃合いだと思うけれど、帰ってくる気配がない。もう少しで昼休み終了のチャイムが鳴ってしまうというのに一体どうしたんだろう。荷物をここに置いたまま戻ったなんて可能性はないこともないだろうけれど多分その線はないと思う。つまり、だ。
ミカゲ「それはここが静香様を見るのに一番いいベストポジションだからです。静香様は1人になりたいと仰って私を傍に置いてくれないんです。そこで私は静香様の見える一番いい場所を探したのです。ほら、見て下さい。あそこで愛しのバラを見る慈愛に満ちたあの表情、静香様の背後に聖母マリアが見えます。ああっ……! 今日も静香様は美しいです……!」
我ながら見事な棒演技だった。大根役者もびっくり。
まるで瞬間移動でもしたかのような光の速さでミカゲちゃんは居なくなった。
ぽつんと玲だけがその場に残されてしまった。
いつの間にか昼休みが終わったようで運動場からどこかのクラスが体育をする声が聞こえてきた。
1人になった玲はなんとなく空を見上げてみる。空は青く澄んでいて、雲がゆっくりと流れていた。いつも通りのお昼の空。空を見上げながら考えてみる。
猫を被っているつもりではないけれど可愛い玲であるために封印したことがある。
きっとミカゲちゃんはそのことを言っている。可愛い自分を犠牲にすることと大好きな女の子を守れる力を天秤にかけたら――。