k-4

文字数 1,448文字

 家のまわりをうろうろしていると、粘液質の何か蠢く物体がいた。


 その物体に近付くと、粘液の形を変え俺に物理的に攻撃してきた。バコッ!

 痛って。ほっぺたに青あざができる程度には、衝撃があった。

 その物体を鑑定したところ。


【モンスター:スライム】


 と出た。

 俺は、小屋に踵を返し、リーチの一番長いクワをもって、スライムに刃を立てた。ザクッ! クワでスライムにダメージを与える俺。

 スライムの物理パンチ攻撃を交わしつつ、ザクザクやっているとやがて、スライムがヘナヘナと力尽きた。

 後には、不思議な色をした石ころのようなものと粘液が残った。粘液はペットボトルに入れ、持ち帰ることにした。

 しばらく、家の周りにいたスライムを五~六体クワで駆除したところで。


『個体名:奥田圭吾はLv2になりました。体力5→6、魔力1→2、気力2→3、力5→7、知能67→68、器用さ9→10、素早さ8→9』


 と機械的な音声のアナウンスが流れると同時に、目の前にステータスウィンドウが表示された。

 この世界の仕様なのだろうか。

 まずは、そのステータスウィンドウ自体に驚いたが。殆どのステータスが一桁。『最弱』という言葉が頭に浮かんだ。

 魔力が2ということがショックだった。俺は実は、とんでもない魔法が使えるのではないかと期待していたのだ。

 今のところ、こちらの世界に来た当初に遭遇した、ゴブリンらしき生物は見ていない。

 しかし、出てきたときには、こちらが大変なリスクを負わされることになることには違いない。

 小さいとは言え、人型のモンスターが武器をもって攻撃を仕掛けてくるのである。普通に考えれば、包丁をもった通り魔に遭遇するようなものである。

 あの奇妙な音声を発する異形の生物を思い出し、俺は身震いした。


 ◇◇◇


 ちょっとした変化があった。イレーヌ薬草と、ムレーヌ毒消草を与え続けた鶏たちが変化したのである。

【ハーブ鶏:その肉には滋養強壮、体力回復、解毒の効果がある】

【ハーブ鶏の卵:滋養強壮、体力回復、解毒の効果がある】

 俺は、20羽以上いたハーブ鶏のうち一羽は自分で醤油をつけて、焼き鳥にすることにした。

 金網は倉庫にあり、火については、チャッカマンと薪があったので、それで用を足すことにした。


 俺は焼き鳥を焼きながら、西の峻厳な山々に夕日が落ちていく様を眺めていた。

 自然の威容を昔の人々は神に例えたというけど、こんな状況になって何となくわかる。

 ちっぽけな人間には絶対に抗えない大自然に神聖さを感じさせてくれるのだ。



 それから俺は焼きあがった焼き鳥にかぶりつくことにした。

 それは涙が出るほど美味しいものだった。


 焦燥、不安。抑圧された極限の精神状態が、最高の料理を食べたことで一気に弛緩した。


 気がつけば、俺の視界は涙で滲んでいた。


 何の涙かよくわからないまま、俺はモグモグと一心不乱に焼き鳥を食べていた。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――
 みなさんこんにちは! お読み頂きありがとうございます。

 ということで、涙もろいケイゴでした。

 実際に自分が異世界に行ったらどうなっちゃう? というコンセプトで書いてまして、実際にこんな場所に放り出されたら確実に泣く自信ありますわ……。
 スライムは強く描かれがちな昨今、この世界ではセオリー通り雑魚モンスターということになってます。

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