k-71

文字数 1,482文字

 アホ貴族に強制連行された冒険者達には気の毒ではあるが、俺にとってはメリットではある。できるかどうかは別にして、ダンジョン攻略を目指している一団なのである。

 俺の家が襲われる危険性が減る。

 ただし、冒険者が死んでしまうと、それはそれで困る。俺の依頼を受けてくれる人が減ってしまっては元も子もない。

 生きて帰ってくれることを、祈るばかりである。あわよくば、モンスターを沢山狩ってきてくれれば助かる。

 昼飯を食った後、俺は、足りなくなっていたポーション類の作成にとりかかる。パルナ解毒ポーションとデュアルポーション(中)を中心に作成していった。


『個体名:奥田圭吾はスキル錬金術Lv5を取得しました』


 そういえば、この間とってきた森の植物をまだ鑑定してなかったな。リスクはあるが、新たな錬金術に派生する可能性がある。毒味は嫌だけどやらなきゃな……。


 17:00
 そう思っていたら森の方から、アホ貴族と冒険者達がこちらに向かって脱兎のごとく逃走してきた。


「「「○▽◆~×○!!!」」」


 何言ってるんだかわかんねーよ! と突っ込む前に、冒険者に担がれているアホ貴族がパキパキと絶賛石化進行中なことに気がついた。

 俺はあわてて、パルナ解毒ポーションをアホ貴族に飲ませて、鍛冶小屋に寝かせた。

 それ以外にも石化進行中の冒険者や火傷を負ったり毒状態だったりする冒険者が多数だったので、デュアルポーション(中)やパルナ解毒ポーションを飲ませて、鍛冶小屋に寝かせてやった。

 最初いた人数からは減っていないので全員無事のようだ。ただし飾り立てられたアホ貴族の馬の姿はなかった。どうでも良いけど、ちゃんと後で金払えよ。


 ◇◇◇


 アホ貴族と冒険者は翌日まで寝込み、ようやく回復した。全くこいつらは、何やってるんだ。

「×○~▽◆×」

 多分だが、冒険者達から、心からお礼を言われているような気がする。表情でなんとなくわかる。俺は手を振って、「大丈夫、問題ない」というジェスチャーをする。

 アホ貴族も回復して起きてきた。俺はペコペコと下手に出て、朝食を出して差し上げた。

 ふんぞり返るアホ貴族。どうでも良いけど、周りの冒険者たちから冷たい視線が向けられてるぞ、アホ貴族。

 冒険者たちは俺に、お礼とばかりお金を払ってくれた。

 アホ貴族は偉そうに何かのたまい、「メルティ!、メルティ!」と意味不明なことを叫びながらお帰りになりあそばされた。

 迷惑でしかなかったな、あいつ。

 ……もう二度と来るな。俺の平穏な生活の邪魔をするんじゃねえ。

 俺は貴族の背中に向かってそう毒づいたのだった。

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