k-92

文字数 1,603文字

 俺は、アホ貴族さまがレスタの町へ戻って行かれるのを見送った。


 11:00
 無事だったアンクルスネアを、均等に小屋のまわりに設置し直した。

 その後、俺は冒険者ギルドに行くことにした。冒険者ギルドの庶民による正しい利用法パート2である。


 13:00
 俺はダンの目の前に金貨100枚が入った袋ドンと置き、空飛ぶトカゲの絵をマジックボードに書いて説明した。

 ダンは手で俺を制止し解っている、とジェスチャーで答えた。

 そうか、既に冒険者ギルドの方に話が回っているのか。ならば話は早い。金貨100枚を全て討伐報酬に上乗せすることにした。

 もう四の五の言っている状況ではない。また奴が襲来したら100%死ぬ自信がある。

 他の町にも強い冒険者がいるだろう。金を積んでても倒してもらわないと困る。

 あとは、壊れたアンクルスネアの補充分を購入した。

 今日からまたモンスターの脅威に怯える日々が続くのか……。大蛇のトラウマ再来である。


 15:00
 俺は、マルゴの家に泊まらせてもらおうかとも考えたが。やめておいた。

 結局、町にあのモンスターが飛んで来る可能性もあるのだ。

 むしろ、自分の家で気配を消して息を潜めているほうが良いと判断した。

 俺は家に戻るとすぐにアンクルスネアを設置して、麻痺薬を塗っていった。土塀も破壊されていた箇所をスコップで修復した。

 これが、あの空飛ぶトカゲの対策になるとは到底思えないが、何もしないよりは気が紛れる。


 18:00
 俺は、体の汗をタオルでふいて、家の中に避難することにした。

 外にいるよりは安全だろう。夕食も家の中で食べることにした。

 ランタンの明かり見ながら、酒を飲んで気を紛らわし、アッシュを抱きしめて、布団の中でガクガクブルブルと震えた。

 アッシュは大丈夫だよ! と励ますように俺をペロペロしてくれた。

 酒を飲んだところで、恐怖心を紛らわすことなどできなかった。甘かった。これほどの恐怖が襲って来るとは。

 この恐怖心を解って頂けないかもしれないが、10メートルを超える空飛ぶ爬虫類をあなたは見たことがあるだろうか? 倒してやろうなどという気は微塵も起きないはずである。


 俺は、朝まで眠れなかった。マルゴの家に泊まって、一緒に酒でも飲んだ方が良かったと心底後悔した。本当に辛い夜だった。

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