第5話

文字数 1,409文字

休みの日。
先週は出かけたから今日は家でゆっくりしようと、健斗さんの家でいわゆるお家デート。
とはいっても、お互いに好きなように過ごすだけ。
それでも私はこの時間が好きだし、たぶん健斗さんも好きなのだと思う。
健斗さんはソファーの定位置に座って、小説を読んでいる。
私はその隣でノートパソコンをぱちぱち。
好きなキャラの2次創作系のコンテンツを見ていると、「○○をしないと出られない部屋」というものを見つけた。
ああ、少し前にもこういうの見たな~と思いながら、皆さんがどのようなネタで描いているのかをチェックしていく。
その中に「エロいキスをしないと出られない部屋」というものがあった。
あー、これはなかなか……と思っていたら、無意識のうちに口に出てしまっていたらしい。

「エロいキス……」
「……何ですか?」

健斗さんがものすごく怪訝な表情で私を見ていた。

「いや、エロいキスをしないと出られない部屋があったとして、どういうキスをすれば出られるのかなって……」
「ああ、またその手の話ですか」

健斗さんとは付き合って結構な時間が経っているし、キスだってそれ以上のことだってする。
ただ、普段しているキスがエロいキスなのかと言われると自分じゃわからない。

「健斗さんはエロいキスってどういうのだと思います?」
「そうですね……腰砕けになるくらいのキスとかじゃないですか?」
「腰砕け……」

健斗さんとのキスでそこまでになったことはないなと思っていると、健斗さんが予想外のことを言った。

「してみますか?」
「はい?えっ、いや、健斗さんそういうキスができるんですか……」
「さぁ?やってみないことには何とも。まぁ、物は試しということで」
「い、いいですけど……」

ムードもくそもないなと思いながら向き合って、健斗さんとキスをする。
いつものように私の頬に手を添えて、優しく触れるだけのキス。
ちゅっちゅっと軽く音を立てながら何度も何度も角度を変える。
いつも通りのキス。
それから健斗さんの舌が入ってきて、歯列や歯茎を優しく撫でる。
時折、お互いの舌を絡ませる。
これもいつも通りのキス。
いつも通りのキスじゃないですか……そう言おうとしたその瞬間に健斗さんの手が私の後頭部に回り、ぐっと引き寄せられた。
それからは何が何だかわからなかった。
貪るようなキスというか、もう本当に食べられちゃうんじゃないかと思うようなキス。
息をしたくて逃げようとしても、逃げられない。
いつも紳士な健斗さんだからか、少し乱暴な感じが余計に興奮した。
これ以上されたら本当に倒れちゃうかも……というところで、ようやく解放してもらえた。
こっちは頭がふわふわしているというのに、健斗さんは余裕の表情で何なら少しにやっとしていた。
私の頬から耳までを優しく撫でて笑っている。

「ふふっ、耳まで真っ赤ですね。どうでした?腰砕けになりましたか?」
「はい……なんかすごかった……です」
「これで部屋に閉じ込められたとしても無事に出られますね」
「……というか、健斗さんこんなキスをどこで覚えたんですか……」
「覚えたというか、普段我慢していたことをやってみただけのことです」
「我慢……?」
「あんまりがっついてなるみさんに嫌われたら困るので」
「嫌いになんかならないですけど……むしろ、余計に離れられなくなるんですけど……」
「そうですか、それはよかったです」
「責任取って、ベッドの上で今のキスもう1回してください」
「ふふっ、わかりました」
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