第42話

文字数 1,088文字

「終わったー!」

最後にエンターキーを大袈裟に叩いて、天井を仰ぎながら背伸びをする。
他にもまだ仕事は残っているけど、最優先だった大きな仕事がやっとひとつ終わった。

「終わりましたか」

キッチンのほうから健斗さんの声がする。
キッチンに行くと、健斗さんがちょうど和え物を作っているところだった。
いつもは料理中の邪魔はしないようにしているけど、仕事が終わったハイな状態のまま後ろからぎゅっと抱きつく。
「やっと終わった~」と言いながら健斗さんの背中に頭をぐりぐりと押しつけると、健斗さんが「ふふっ、お疲れ様です」と笑った。

「お料理、あとどれくらいで終わります?」
「もうこれで終わりですよ」
「そうですかー。お料理終わったら、めちゃくちゃ甘えてもいいですか?」
「ふふっ、もちろんですよ。もうすでにだいぶ甘えている気がしますけどね」

一旦健斗さんから離れて、いつものソファーに移動する。
ソファーの前のテーブルにはチョコレートがいくつか置いてあって、それをひとつ口に放り込む。
口の中に広がる甘さにうっとりしていると、料理を終えた健斗さんが私の横に腰かけた。
私はすかさず、健斗さんの膝の上に乗って、健斗さんに正面から抱きつく。

「あぁ~、癒される~……」
「ふふっ、それは何よりです。なるみさんは最近特に忙しかったですからね」
「いちゃいちゃできなくて、健斗さん分が不足してました」
「私もなるみさん分が不足していましたよ」
「健斗さんも、私といちゃいちゃしたかったですか?」
「それはもちろんですよ」

健斗さんの肩と首筋に顔を埋める。
洗濯物のにおいと健斗さんの体温で、本当に心が落ち着く。
もう本当にこのまま溶けてしまってもいいくらい。

「……ねぇ、健斗さん」
「何ですか」
「キスしてもいいですか?」
「奇遇ですね。私も同じことを聞こうと思っていたんです」

少しだけ見つめ合って、唇を重ねる。
「もっと」と言わなくても、どんどんキスが深くなっていく。
何度も何度も角度を変えて、少し息が苦しくなってきたところでまた健斗さんの首元に顔を埋めた。

「甘いですね」
「さっきチョコ食べたんです」
「そうですか。まだ息は苦しいですか?」
「んー、もう大丈夫ですよ」
「なら続きをさせてくださいよ」
「え~、どうしよっかな。なら健斗さん、おねだりしてみてくださいよ」
「おねだりですか。困りましたね」

すると、健斗さんが私の首筋にわざと音を立てるようにキスをして、耳元で「お願いします」と囁いた。
艶めかしい声にぞくぞくしていると、あっという間に唇を奪われてしまった。
まだ返事をしてないのに……と思いながら、ソファーの上で何度も何度もキスを重ねるのだった。
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