第7話

文字数 596文字

「戻りました」
「おかえりなさい!」

帰ってきた健斗さんに抱き着く。
厚めの胸板にしばらく顔を埋めていると、頭を優しく撫でられた。

「……仕事で何かありました?」
「んー、いろいろ……」
「そうですか」

そう言うと健斗さんは私の手を引いて、ソファーに座る。
膝の上に座るように手で促されて、素直に従う。
座っている健斗さんに抱き着くような姿勢になる。

「頭おかしいやつばっかりで嫌になります」
「フリーランスはフリーランスで大変でしょうからね」
「どう考えても相手に常識がないんだけど、だからといって私も完璧かというとそうじゃないから余計にもやもやする……」
「ふふふっ、わかりますよ。……仕事が嫌ならもういっそのこそ専業主婦になりますか?」
「んー……頭のおかしいクライアントが嫌なだけで、仕事は好きなんですよねぇ」
「そうですね。仕事をしているときのなるみさんは生き生きしていますから」
「……あれ?」
「どうしました?」
「今、専業主婦って言った?」
「言いましたね」
「それってプロポーズ……?」
「ああ、そうなりますね」
「……全然ロマンチックじゃない」
「でもなるみさん、そういういかにもなのはあんまり好きじゃないでしょう?」
「それはそうですけど……」
「そもそも私はなるみさんと結婚するつもりでずっと一緒にいるわけですから」
「え~、じゃあ結婚しちゃう?」
「ふふふっ、いいですよ」
「あ~、でも本当に全然ロマンチックじゃない……」
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