第41話

文字数 5,701文字

仕事から帰ってきた健斗さんとお風呂に入って、ご飯を食べて、ベッドに入る。
明日は休み……というのは実はあまり関係なくて、普通に毎日のように致している。
ベッドがさっきよりも大きく軋み、布の擦れる音も激しくなる。
ああ、またいっちゃう……と思ったその瞬間、健斗さんの仕事用の携帯が鳴った。
思わずお互いにぴたっと動きを止めて、顔を見合わせる。

「健斗さん、鳴ってます」
「はぁ……こんなタイミングで……」
「ふふふっ、出たほうがいいんじゃないですか」
「すみません……」

熱いものが引き抜かれて、ベッドの中にひやりとした空気が入ってくる。
健斗さんはいつも使っている専用のバスローブをさっと羽織って、仕事の電話に出た。
私は仕事をしているときの健斗さんも好きだから、途中やめになっても平気。
さっきまであんなに色っぽかったのに一気に仕事モードに戻る健斗さんを見ていると思わず笑ってしまう。
電話が終わると、はぁ……と大きなため息をついて、バスローブを脱ぎながらベッドの中に戻って来た。

「ふふふふふっ……」
「……何ですか?」
「いや、電話かけてきた人もまさか健斗さんが真っ最中だったとは夢にも思わないだろうなと思って。仕事のほうは大丈夫だったんですか?」
「ただの確認でした。それも今ではなくてもいい内容の」
「そうですかー。ふふふっ、珍しく健斗さんが不機嫌そうな顔になってますね」

あまり顔に出ない健斗さんだけど、いつもよりも少しむすっとした表情になっている。
なんだかそれが可愛くて、その顔を両手で包んで、ほっぺをふにふにと弄ぶ。

「何かミスがあったならわかるんですが、あの内容でなるみさんとの時間を邪魔されるのはさすがに……」
「いいじゃないですか。明日も休みでずっと一緒にいられるんですし」
「どれだけ一緒にいられても、私にとってはなるみさんと一緒にいられる時間はいつでも大事なんですよ」
「ふふふっ、嬉しいです。今までも何回か一緒にいるときに電話がかかってくることはありましたけど、このタイミングは初めてですね」
「そうですね。だから余計になぜこのタイミングなのかと……」
「健斗さん、萎えちゃいました?」
「……確認してみますか?」

健斗さんが私の手をとって、さっきまで私の中に入っていたものに触れさせる。

「……が、がちがちなんですけど……」
「私としては今すぐにでも続きをしたいんですが、なるみさんはどうですか?」
「えっ……し、してほしいです……」
「ふふっ、よかったです」

ほとんど寸止めに近い状態だったからか、続きを始めるといつも以上に感じてしまって、結局、お互いにかなりの夜更かしをすることになってしまった。
翌朝、一緒にシャワーを浴びたものの、お互いになんとなく昨晩の余韻が残っていて、そのままベッドに戻ってしまった。

「ふふふっ、朝からしちゃうんですか?」
「朝食の準備をしないと、と頭ではわかっているんですが、体が言うことを聞いてくれそうにないですね」
「……昨日、電話がかかってきて中断したじゃないですか」
「ええ、そうですね」
「なんか……それが、その……寸止めされて、焦らされてるみたいで……その後すごくよかったから今日はそういう感じでしてほしいです……」
「……ほう、そうですか。でも前に焦らされるのはあまり好きではないと言っていませんでしたか?」
「それは……ま、前の人とのそういうので、あんまりいい思い出がなくて……」
「これから私とするのに、他の男の話をするのはいただけませんね」
「い、今のは不可抗力ですよ!」
「冗談ですよ。まぁ、正直、昨日は私も興奮したので、今日はご希望通りとことん焦らしてみましょうか」
「……あんまりいじわるしないでくださいよ」
「ふふっ、それはどうでしょう。なるみさんの反応次第ですかね」

そう言うと掛布団をめくって、健斗さんが私の足に手を這わせて割り開いた。

「……毎回毎回、なるみさんには前戯が必要ない気がしますね」
「うっ……しょうがないじゃないですか。もともと濡れやすい体質なんですから……」

健斗さんが指を中に沈めて、中をゆっくりとかき回す。
くちゅくちゅと音がして、恥ずかしいのに自分のいやらしさと健斗さんにいやらしいことをされているこの状況に興奮してしまう。
一通り中を撫で回すと、健斗さんの中指と薬指が一箇所だけを攻めてきた。
いってしまうほどではないけど、気持ち良くて腰がびくびく震えてしまう。

「ふふっ……ここ、いいんですか?」
「あっ、あっ、わかんない……」
「少し前からこのあたりだけ反応が違う気がしていたんですが、当たりだったようですね」

いくほどではない快感がずっと継続的に与えられる。
指だけでこんなに気持ちいいのに、この後、耐えられるのかな……なんて思っていると、健斗さんが私の中から指を抜いた。
思わず声を漏らすと、「そんなに抜いてほしくなかったんですか?」と笑いながら健斗さんが指を舐めた。
恥ずかしくて足を閉じようとすると、それを制止して、健斗さんが顔を埋める。
刺激がほしかったところに、健斗さんの舌が容赦なく這う。
でも、いつもよりも優しく、それでいてねっとりと愛撫される。
もっと強くしてほしくて健斗さんの顔に腰を押し付けるように動かすけど、健斗さんは求めるような強さでは刺激してくれない。
いつもみたいにきゅっと強く吸い上げて、舌先で激しく攻めてほしい。
腰をくねらせて快感に悶えていると、また中に指が入ってきた。
クリトリスへの刺激はそのままに、中からもさっきの場所を同じように攻められて、快感が増す。
でもどれだけ快感が増しても、いけそうにはない。
自分の呼吸がどんどん荒くなって、腰だけではなく、全身がびくびく震えてしまう。
しばらくクリトリスと中を弄ばれて、指での刺激はそのままに健斗さんが顔を上げた。
泣きそうになっている私の顔を見て、満足気に笑っている。

「そんなにいいですか?焦らされるのが」
「やぁっ……健斗さん、もっと強くして……」
「強くしたらいってしまうでしょう?」
「んっ、んっ……もういきたい……」
「ふふっ、焦らしてほしいと言ったのはなるみさんなのに」

健斗さんは途中で言葉を切ると、私の耳元で「いけない子ですね」と囁いた。
その囁きにぞくぞくしていると、健斗さんが健斗さんがクリトリスを強く吸い上げて、激しく舌先で嬲り始めた。
指の動きに合わせて水音も激しく大きくなって、健斗さんが私を絶頂へと導こうとしているのがわかる。
あっ、あっ、いっちゃう……そう思うのと同時に、自分でも信じられないくらいに体が跳ねた。
大きくびくんと跳ねた後も、不規則に体がびくびくと震えてしまう。

「あっ、んっ……い、いっちゃいました……」
「今までで一番激しかったんじゃないですか?ふふっ、顔が真っ赤ですよ」
「はぁ……すごい気持ちよかったです……」
「休憩しましょうか」
「休憩……するんですか?」
「なるみさんは今日、焦らしプレイをご所望でしょう?今入れたらすぐにいってしまって、焦らすどころじゃないでしょうから」
「そ、それは健斗さんの話ですよね……」
「まさか。なるみさんの話ですよ」
「うぅ、さすがにそこまでじゃないと思いますけど……」
「さぁ、どうですかね。試してみてもいいんですが、私も今日はじっくり楽しみたいので」

話をしながらも、どちらともなく自然と唇を重ねた。
健斗さんの首に腕を回して、抱き着くようにして甘える。

「……健斗さんって、こういうプレイ、慣れてるんですか?」
「一応聞きますけど、慣れているというのは?」
「……前の人ともこういうプレイ、いっぱいしてたんですか?」
「ふふっ、してませんよ。何でそんなことを聞くんです?」
「だって……なんか手馴れてる感じがしたから……」
「手馴れている、ですか。それを言うなら、私が的確になるみさんのつぼを押さえられるようになったということでは?」
「うーん……そうかも」
「まぁ、これだけしているわけですからね。前にも話しましたけど、なるみさんと付き合うようになる前までは本当に淡泊だったので。相手にしてみたら、最低限しかしないつまらない男だったと思いますよ」
「ふーん……昔はそんなにしたいと思わなかったんですか?」
「当時は恋人の義務のようなものだと思っていましたし、欲もそこまでなかったですから。……そもそも今のように時間をかける発想はなかったですね」
「……今も義務みたいになってないですか?」
「ふふっ、ないですよ。何でですか?」
「え~、だって……生理のとき以外はほとんど毎日私がしたがるから……」
「そうだったんですか?」
「へ?」
「生理前は積極的になるなぁとは思っていたんですが、それ以外もしたいと思ってくれていたんですか?」
「……そ、そうですけど」
「そうですか。私は逆になるみさんを付き合わせてしまっているんじゃないかと思っていたんですが、杞憂だったようでほっとしました。これでより安心して抱けますね」
「け、健斗さんもその……私といっぱいしたいと思ってるんですか?」
「そうですね。この年で旺盛になるのも困りものだなとは思いますが」
「本当にぃ~?私に気を遣ってないですか?」
「ふふっ、気を遣ってものを硬くできるほど器用ではないですよ」
「それもそうかー」
「さぁ、そろそろ続きをしましょうか」

ぐるんと上下が逆転して、健斗さんに組み敷かれる形になる。
ゆっくりと健斗さんのものが入ってくると、軽いキスが降ってきた。
健斗さんが動き始めるものの、いつもよりも浅いところをゆるく刺激するだけで正直、物足りない。
微妙な顔をしている私を見て、健斗さんは少しおかしそうに笑う。

「ふふっ、物足りないですか?」
「んっ……なんか、いつもは健斗さんのが入ってきたらわりとすぐにいっちゃうから変な感じ……」
「今日は焦らさないといけないので、いいところは避けているんですよ」
「い、いいところですか……」
「例えば、このあたりですかね」

そう言うと、健斗さんのものがぐっと奥に入ってきて一箇所だけを擦るように刺激してきた。
同時に「あぁっ」と思わずいやらしい声が漏れてしまって、恥ずかしくなって手で自分の口を塞ぐ。

「なるみさんはわかりやすいですね」
「……わかりやすすぎて、つまらなくなっちゃったりしないですか?」
「まさか。可愛くて仕方がありません」

健斗さんは何回かに1回だけいいところを刺激して、それ以外は浅いところでゆるゆると抜き差しを繰り返した。
そのうち、いいところを刺激する頻度が上がってきて、いけないのにいきそうな感覚だけが高まってくる。
呼吸も荒くなってきて、声も我慢できなくなってきた。
健斗さんのものをいいところを当てたくて、自分の腰を擦りつけるように動かしてしまう。

「……いけませんね。自分から腰を振るなんて」
「あっ、あっ、だって……もういきたい……」
「焦らしてほしいんでしょう?」
「やぁ……もう限界……」
「そうですか。じゃあ……どうしてほしいんですか?」
「いいところ、健斗さんのでいっぱい突いて……いつもみたいにいっぱいいかせて……」

自分でもものすごく恥ずかしいことを言っている自覚はあったけど、なんとなくそう言わないと健斗さんが続きをしてくれない気がした。
さっきまでとは打って変わって、健斗さんのものが力強く奥まで入ってきて、私のいいところだけを容赦なく刺激してくる。
体が仰け反るような快感に、声が我慢できない。
何度も何度もそこばかりを突かれて、すぐにいってしまった。
いくのと同時に腰が少し浮いて、その状態のままびくびくと震えるのが止まらない。
恥ずかしいのに、体が全然言うことを聞いてくれない。

「そんなに腰を振って……もっとほしいんですか?」
「あっ、あっ、違っ……いっちゃって、腰が止まんない……」
「ほら、大丈夫ですよ。私がしっかり動きますから」
「違っ、今はまだダメ……あ゛ぁっ」

健斗さんが私の腰をつかむと、また容赦のない律動を始めた。
いった余韻を引きずったまま、また大きな快感の波がやってきて、それが引かないうちにまた別の快感の波がやってくる。
ひどくはしたない声が出ているのはわかっていたけど、気持ち良すぎて何も考えられなかった。
そのうち、健斗さんの呼吸が荒くなってきて、打ち付けられる腰の動きもどんどん激しくなる。
もう何回目なのかわからない絶頂を迎えると、私の中でも健斗さんのものがびくびくと脈打っていた。
肩で息をしていた健斗さんが呼吸を整えるように深呼吸をすると、はぁ……と息を吐きながら私の体を優しく抱きしめた。
余韻で痙攣するかのように震えていた体が落ち着いてくると、少しずつ頭が働き出した。

「健斗さん」
「何でしょう」
「すっごいよかったです……」
「ふふっ、私もです。それにしても、なるみさん」
「何ですか?」
「だいぶMっ気に拍車がかかっている気がしますね」
「そうなんですよねぇ……」
「今日もとても可愛かったですよ」
「うぅ……」
「『いっぱい突いて』と言われたときはさすがに理性が飛びそうになりました」
「り、理性が飛んだらどうなるんですか……?」
「さぁ、わかりません。まだ飛ばしたことがないので」
「……理性飛んでても、健斗さんにならめちゃくちゃにされてもいいとかちょっと思っちゃってるあたり私も重症ですよね」
「だいぶ重症ですね」
「もうやだぁ……健斗さん、責任とって……」
「ふふっ、言われなくてもそのつもりですよ。もっとうまく焦らせるように私も頑張りますから」
「これ以上頑張られると私がもたないんですけど」
「もっと見たいんですよ」
「何をですか?」
「なるみさんが乱れるところを」
「も、もう十分見てるじゃないですか……」
「いえ、今日の乱れようは今までで一番でしたよ。声もそうですが、動きとあとはおねだりの……」
「い、いい!もうそれ以上言わなくていいですから!」
「まぁ、とにかく可愛かったということです。ふぅ……お互いにかなり消耗したので、しっかり食事はとりましょうか。何が食べたいですか?」
「……オムライス」
「ふふっ、わかりました。じゃあ作りますから、なるみさんはゆっくり休んでいてください」

そう言うと、健斗さんはキスを落とした。
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