第27話

文字数 945文字

部屋でふたり、まったりとしているとき。
テレビを見ているとバラエティー番組で有名人が「顔がとにかく好みだったから結婚した」というようなことを話していた。
私は私の顔が健斗さんの好みではないことを知っている。
なぜなら、前に好みを聞いたことがあるから。

「健斗さん」
「何ですか?」
「前に、健斗さんの好みを聞いたことがあるじゃないですか」
「はいはい」
「あの、カテリーナ?カテリーヌ?何とかって女優さん……」
「カトリーヌ・ドヌーヴですか」
「そう、その人です。やっぱりそういう人が見た目的には好みなんですか?」
「……何の話ですか?」

健斗さんは、また面倒なことを言い始めたなという顔をしている。

「私、かすってもないじゃないですか。かろうじて同じ人間という属性にいるだけというか……」
「それを言うなら、なるみさんだって好きなタイプは漫画かアニメのキャラクターでしょう。次元が違うじゃないですか」
「私的には健斗さんは実写レベルの人なので、いいんです」
「そうですか」
「私、全然健斗さんの好みじゃないなーって」
「……唐突に好みを聞かれたから絞り出して答えたのであって、別にカトリーヌ・ドヌーヴが理想というわけではないですよ。たまたま聞かれる前に作品を見ていたので、名前が出てきただけです。そもそも見た目なんてあまり気にする必要ないでしょう。年齢を重ねたら、誰だって同じようなものなんですから」
「んー、まぁそうですけど……」
「気にしてたんですか?仮に好みがあったとしても変わるものですよ」
「健斗さん、好み変わったんですか?」
「もともとこれという好みはないですが、今は好みと言うならなるみさんですよ」
「別に気を遣わなくてもいいですよ」
「気を遣っているわけではなくて……一緒にいるうちに好みだと気づくというパターンもあるわけです」
「ふーん……じゃあ今は私が好みなんですか」
「そうです。……好みというより、なるみさんでないとダメになってしまいましたね」
「ふっふっふっ、それはいい傾向です」
「なるみさんはこれから好みが変わったらどうするんですか?私と真逆のタイプが好みになるかもしれないですよ」
「んー……たぶん好み変わらないし、変わったとしても私も健斗さんじゃないとダメになってますね」
「ふふっ、ならお互いに問題はないですね」
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み