第35話

文字数 1,208文字

事後、健斗さんに抱きしめられながらその胸で先ほどまでの快感の余韻に浸っていた。
ただ、結構な疲労感もある。

「健斗さん」
「何ですか?」
「私たち、ほぼ毎日してるじゃないですか」
「ええ、そうですね」
「健斗さんは毎日して疲れないですか?」
「……」

返事がないので顔を上げてみると、健斗さんは困ったような顔で笑いをこらえている様子。

「……何ですか、その反応」
「いえ……ふふっ……疲れると言うなら、私よりもなるみさんのほうを心配すべきかと……」
「ぐぅ……」
「前よりも激しくなりましたからね、動きが」
「う、うるさいですよ……」
「私は毎日しても全然ですよ。なるみさんよりは確実に体力もありますし」
「でも、健斗さんはこれで朝起きて満員電車に乗って仕事に行くわけですよね?私は家で仕事するから多少疲れてても平気ですけど、健斗さんは外に出る分、体力使うじゃないですか」
「どうでしょう。もともとあまり疲労を感じないタイプでしたけど、なるみさんと暮らすようになって余計に疲労を感じなくなった気はします」
「そうなんですか?」
「仕事で疲れたと思うことはあっても、家に帰ってなるみさんの顔を見たら疲労感も飛ぶんですよ」
「そ、それはどうも……でも、それって感覚が麻痺してる可能性もありますよね。明日はあえてせずに次の日のコンディションを確認してみてくださいよ」
「ふふっ、そうですかね。なるみさんが気になるなら、明日はせずに過ごしてみましょうか」

そんなやり取りをして、翌朝を迎えて、健斗さんは仕事へ行き、私は家で仕事。
健斗さんが帰ってきて、一緒にご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、あとは寝るだけ。
その頃には昨晩のやり取りなんて頭から綺麗に消えていて、いつものように一緒にベッドに入っているというのにそういう雰囲気にならないことに違和感を覚えていた。
自分から健斗さんに甘えるように触れて、「健斗さん、今日はしないの……」と言いかけたところで昨晩のやり取りを思い出した。
自分から今日はしないと言ったはずなのに、自分から求めてしまったことが恥ずかしくてベッドの中で顔を覆って丸くなる。

「ふふっ、なるみさん。続きを言ってくださいよ」
「やだ……昨日言ったこと、今思い出しました……」
「ほら、可愛い顔を見せてください」

そう言うと健斗さんは私の手をとって、顔をのぞき込む。

「はぁ……健斗さんのせいで私は毎日求める淫らな女になってしまいました」
「それは大変です。ここで満たしておかないと、他のところに行ってしまいますかね」
「健斗さんじゃないとダメな体なので、他のところに行くことはないですね」
「それは嬉しいですね。……今日もしましょうか」
「もう……健斗さんを休ませたかったのに……」
「毎回どう考えても休ませるべきはなるみさんのほうなんですけどね。休ませてあげたほうがいいですか?」
「やだ……疲れててもしたい……」
「ふふっ、私のせいと言われてしまったので責任はとりますよ」
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