第22話

文字数 1,665文字

やっと健斗さんが帰ってくる。
今までも出張はあったけど、5日も健斗さんがいないのは初めて。
お互いにいい大人だし、平気だろうと思っていたのに思っていた以上につらかった。
そんなことを考えていると、玄関のドアがガチャリと開いた。

「おかえりなさい!」

健斗さんがただいまを言う前に、玄関に駆けていって抱き着く。
「ふふっ、ただいま帰りました」と健斗さんの優しい声が降ってきて、頭を撫でられる。
ただ、その瞬間、健斗さんから女ものっぽい香水の香りがした。
普段、健斗さんは香水をつけない。
嫌な想像が頭の中に広がる。
必死でそれを振り払って、たまたまかもしれないと無理やり自分を納得させた。
健斗さんは出張先での出来事を私に話してくれて、いつもよりスキンシップ多めで私を甘やかしてくれる。
幸せな時間のはずなのに、少し前にネットで見た「出張から帰ってきた彼がおしゃべりでやたらスキンシップをしてくるなと思ったら、実は彼が出張と嘘をついて浮気相手と旅行していた」という話を思い出してしまう。
脳内がぐるぐるしている間にそれらしい雰囲気になって気づけばベッドの上。
全部脱がされると、すぐに健斗さんがキスをしてきた。
いつもよりもゆっくりで濃厚なキス。
そのままキスが首筋に落ちていって、首筋を優しく舌でなぞる。
両手で慈しむように胸を愛撫し、胸にも舌を這わせる。
全体を口に含むかのように吸い上げては先端を舌先で刺激する。
いつもよりも時間をかけて、ねっとりとした愛撫。
胸の愛撫が終わるとお腹にキスをして、そのまま下へ。
クリトリスの右側を根元から舐め上げると、今度は同じように左側を根元から舐め上げる。
全体を舌で弄んで、口に含んでさらに刺激を与える。
中に指が入ってくると、じわじわとこみ上げてくる深い快感で全身が粟立ち、腰が跳ねてしまった。
じっくりと時間をかけられたからか、いつもよりも激しくいってしまった気がする。
鳥肌の立っている私の足を撫でながら、「ふふっ、そんなによかったですか?」と聞いてくる健斗さんに思わず言ってしまった。

「健斗さん……」
「何ですか?」
「……浮気、しました?」
「……はい?」
「浮気、したんですか……」
「すみません、何を言っているのかまったくわからないんですが……」
「帰ってきたとき、香水のにおいがしました……」
「ああ、あれですか」

そう言うと、健斗さんは仕事用のバッグから小さなガラスボトルを出してきた。
そのボトルを受け取った瞬間、あの女ものっぽい香水の香りがした。

「これ……」
「今回の出張、香水の商品開発に関するものだったんですよ。男性を虜にするような香水というのがコンセプトで、男性の意見を聞きたいからとさんざん香りのチェックをさせられました」
「そ、そうだったんですか……」
「まぁ、女性ものの香水をつけて帰ったと思われても仕方ないかもしれませんね。私もたぶん今は嗅覚が麻痺してるでしょうし。それでも浮気を疑われるのは心外です」
「だ、だって、いつもよりいっぱい話してくれるし、いっぱい触ってくれるし、その……いつもよりいやらしいし……」
「いつもよりおしゃべりになっている自覚はなかったんですが、やっとあなたに会えたので口数は多くなっていたのかもしれませんね。おそらくたくさん触れてしまったのも無意識です。……話は変わりますが、なるみさん、角のケーキ屋さんのガトーショコラ好きですよね」
「……?好きですけど」
「最近、あまり食べていませんよね」
「はい」
「今食べられるとしたら、どういう風に食べますか?」
「どういう風にって?」
「すぐに一口でぱくっと食べてしまうのか、大事に味わいながら食べるのかということです」
「そりゃあ大事に味わいながら食べますよ。久々ですもん」
「それと同じです」
「何がですか?」
「久々にあなたを抱けるので、大事に味わいたかったんです。結果的にいやらしいと言われてしまいましたけどね」
「そ、そうですか……」
「それで、続きをしても?」
「い、いいですよ……」
「いやらしくなってしまいますが、いいですか?」
「うぅ……いっぱいしてください……」
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