第45話

文字数 2,373文字

一緒にシャワーを浴びて、そのままベッドに入る。
普段なら健斗さんが覆いかぶさってきて事が始まるのだけど、今日はそうされる前に私が健斗さんの上に乗った。

「おや、今日は趣向を変えて……というところですか?」
「いつも攻められてばかりなので、今日は私が頑張って攻めたいと思います」
「ほう、それは楽しみです」
「私が頑張るので、健斗さんはされるがままでいてください」
「ふふっ、わかりました」

笑っている健斗さんの両頬に手を添えて、キスをする。
ゆっくり攻めていこうと思っていたのに、すぐに健斗さんの舌が入ってきて、あっという間に主導権を握られてしまった。
背中を優しく撫でられると、つい心地よくなってしまう。
このままではいけないと、健斗さんから唇を離す。

「もうっ、されるがままでいてって言ったじゃないですか」
「キスに応えるのもダメですか?」
「ダメです。勝手に触るのもダメ」
「そうですか。善処します」

もう一度、気を取り直して健斗さんにキスをする。
さっきみたいに健斗さんの舌が入ってくることはなくて、私が一方的に唇を重ねるだけ。
でも、健斗さんの反応がなくなると寂しくなってきた。

「……健斗さん」
「何でしょう」
「やっぱり触ってほしい……」
「ふふっ、いいんですか?私も触れたくて仕方がなかったのでありがたいですね」

改めてお互いの唇を貪るように、キスをする。
大げさなくらいのリップ音を立てて、何度も何度も角度を変えてのキス。
いつも健斗さんがしてくれるみたいに、私も健斗さんの首筋にキスを落としていく。
それから上半身を起こして、指先で健斗さんの乳首をいじめる。
でも、健斗さんは微笑みながら私を見上げるだけで、特に感じている様子はない。

「……あんまり感じないですか?」
「何も感じないわけではないんですが、なるみさんのほうが敏感なんでしょうね」

そう言うと、健斗さんの手が私の太ももから腰、ウエストを撫でていって、そのまま胸を柔らかく包み込む。
親指で先端を優しく弾かれると、思わず声が漏れてしまった。

「あっ」
「ふふっ、なるみさんを見上げながらというのもいいですね」
「ぐぅ……健斗さん、攻め甲斐がないです」
「そうですか?私は楽しいですよ」
「……こっちだってまだ何にもしてないのにたってるし」
「仕方ないでしょう。好きな女性が自分の上にまたがっていたらそうなりますよ。……なるみさんだってもう濡れているでしょう?」
「うう……も、もういいですから。今日は私が上で動きます」

そう言った後、健斗さんの上から一旦おりて、体の向きを変えてからまた健斗さんの上に乗る。
動いているときの顔を見られたくなかったから、健斗さんに背を向ける形で。

「そっちを向いてしまうんですか?」
「そうですよ」
「ああ、残念です」
「だって、恥ずかしいんですもん」
「ふふっ、そうですか」

ゆっくりと健斗さんのものをあてがって、腰を沈めていく。
後ろから見られるのも恥ずかしいけど、恥ずかしいことをしているこの状況にも興奮してしまう。
全部をのみ込むと、健斗さんが腰からウエストにかけてを何度も優しく撫でてくれる。

「綺麗なラインです。それに後ろ姿というのもなかなか興奮しますね」
「んっ、動きますよ……」

健斗さんの上でゆっくりと腰を動かす。
中で健斗さんのものが擦れるけど、健斗さんに突かれているときのような快感は得られない。
ベッドの軋む音と自分の吐息ばかりが部屋に響く。

「んっ、んっ……健斗さん、全然いけそうにないですか……?」
「……それよりも、なるみさんのほうがつらいんじゃないですか?」
「わ、わかんない……」
「体の向き、変えてもらえませんか?」

そう言われて、一度健斗さんのものを引き抜いて、また体の向きを戻した。
羞恥心はまだあったけど、なかなかいけない状態で頭がぼんやりしていた。
向き合う形で、健斗さんのものに腰を沈めていく。
すると、健斗さんが私の両頬を手で包んだ。

「ふふっ、火照ってますね。可愛いです」
「……うまくできなくてごめんなさい……」
「十分ですよ。私の上で恥じらいながら動いているなるみさんが見れたんですから、最高です」

健斗さんはそう言いながら私の腰をつかんで、そのまま何度も自分のものに打ち付けた。
自分で動くときには当てられなかった部分に健斗さんのものががんがん当たって擦れると、いつものような快感に腰が勝手に震えてしまう。
健斗さんの胸に手を押し付けるようにしながらどうにか上半身を支えていたけど、ようやくやってきた大きな快感の波にのまれるのと同時に健斗さんの胸にどさっと倒れ込んだ。
肩で息をする私を愛おしむように、健斗さんが抱きしめる。

「自分で動くのと全然違う……」
「ふふっ、よかったですか?」
「すごい気持ちよかったです……」
「今度は私が上になっていいですか?」

返事をせずにコクンと頷くと健斗さんの上半身が起き上がって、つながったまま座って抱き合う形になる。
何度も何度もキスをして、そのまま私が押し倒される。
その後はいつも通り……というより、いつもよりは激しめに抱かれた。

「なるみさんを見上げるのとなるみさんを見下ろすのと、どちらも捨てがたいですね」
「でも私が上だとやっぱりうまくできないですね」
「それがいいんじゃないですか」
「へ?」
「うまくできないながらも恥じらいつつ一生懸命やってくれるのがいいんですよ」
「そ、そうですか……」
「はぁ、なんだか知らず知らずのうちに手玉に取られている気がします」
「私が健斗さんを手玉に取っている、と?」
「そうですね。手のひらで転がされている気がしますよ」
「えぇ~、それはこっちの台詞なんですけど」
「突然上に乗ったと思ったら、あんなに可愛い姿を見せられて。困ったものです」
「ほう、困りますか?」
「困りますね。ますます夢中になってしまいます」

そう言うと、健斗さんは何度も何度もキスを落とした。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み