第29話

文字数 620文字

「ねぇ、健斗さん」
「何でしょう」
「私が寝取られ趣味に目覚めたらどうします?」

健斗さんは読んでいた雑誌を膝の上に落として、硬直している。

「……目覚めたんですか?」
「違います、違います。もしもの話です」
「ああ、よかった……」

健斗さんは大きく息を吐くと、膝の上の雑誌を手に取って、私の隣に座り直した。

「で、何でまたそういう話になったんですか?」
「いやぁ、突然何かに目覚めるってことはあり得るじゃないですか。もし健斗さんが寝取られ趣味に目覚めて、そういうプレイじゃないと興奮できないってなった場合、私は他の男に抱かれるのを受け入れるしかないのかなと……」
「ああ……考えたくもないですね。私はそっちの趣味には絶対に目覚めることはないと思います。他の男がなるみさんに触れるなんてとんでもない」
「私も最初は嫌々なのに、そのうちプレイに興奮するようになって……ってなるとハッピーエンドなんですかね?」
「……そういう漫画の読みすぎでしょう」
「健斗さんは私が目覚めたらどうします?他の女と健斗さんが……あっ、やっぱりこの話はなしにしましょう。口にしようとしたら思っていた以上に無理でした」
「私の気持ちがわかりましたか」
「……はい」
「万が一、目覚めてしまったらそのときに考えますが、お互いに目覚めないことを祈りましょう」
「はい、たぶん私は大丈夫です」
「私だって大丈夫ですよ。そういう漫画を読んでいるなるみさんのほうが目覚めるリスクは高いんですからね」
「はい……」
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