第47話

文字数 2,187文字

健斗さんが1週間、出張へ行くことになった。
ほぼ毎日抱かれている身としては、それなりにつらいわけで。
帰ってくる日を指折り待って、あと2日。
仕事が終わって、健斗さんのいない家でひとり自分を慰める。
最近、健斗さんと致すときにもおもちゃを使うようになったこともあり、出張前におもちゃでいじめられたときのことを思い出しながらひとりでする。
でも、健斗さんにいじめられたときのような快感はなく、健斗さんのものと比べるとおもちゃは物足りない。
まぁ、とりあえず物足りなくともいっとくか……とおもちゃを動かしていると、玄関のほうからガチャリという音がした。

「ただいま戻りました」

えっ?えっ!?帰ってきた!?
すぐにでも玄関に駆けていきたいけど、ベッドの中が大変なことになっている。
慌てておもちゃのスイッチは切ったものの、ベッドからは出られそうにない。

「お、おかえりなさい……」

布団をしっかりとかぶせ、どうにかかろうじて声を出すと健斗さんがベッドのところへやってきた。
横たわっている私を見て、少し困った表情を浮かべる。

「調子、悪いんですか?」
「いえ、全然……」
「寝てました?」
「い、いえ……」

寝てたと言えばよかったのに、そう言わなかったのはその後の展開を自分でも期待していたからかもしれない。
私の様子を見て勘のいい健斗さんはすぐに察したらしく、追求が始まった。

「……布団から出られますか?」
「今はちょっと……」
「何でですか?」
「い、いろいろとですね……」
「ちょっと失礼します」

そう言うと、健斗さんは私から布団をはがそうとする。

「ちょっ、ちょっとダメですって!」
「……私がいないときにこっそりひとりでしていることくらい知っていますよ」
「えっ!?」

予想外の言葉に驚くのと同時に、布団が私の手からすり抜けていく。
布団をはがされると、何も身に着けていない下半身とまだちょっとだけ中に入っているおもちゃ。

「鎌をかけたつもりだったんですが、図星でしたか」
「うっ……」
「……なるみさん」
「何でしょう……」
「お願いですから、もう少しだけその状態のままでいてくれますか?」
「?は、はい……」

健斗さんが慌てて洗面所のほうへと向かう。
その間、少し整えるくらいはいいかなと体勢を変える。
すると、すぐにうがいと手洗いを終えた健斗さんがベッドまで戻ってきて、長めのキスをしてきた。

「ふふふっ、キスしたかったからうがいしてきたんですか?」
「外から帰ってきたばかりですから。ついでに言うと、しっかり手も洗ってきたのであれこれできますよ」
「えっち」
「出張から帰ってきて恋人がこの状態で我慢しろと言うほうが酷です」
「だって……というか、出張1週間だったんじゃないんですか?」
「予定よりも前倒しになりましてね。残り2日は観光してもいいと言われたんですが、なるみさんに早く会いたかったので。ちゃんとメールも入れましたよ」
「えっ、気づかなかった……」
「メールに気づかないくらい、これに夢中だったんですか?」
「ちっ、違いますよ!もとはと言えば、健斗さんのせいなのに」
「私のせいですか?」
「ほぼ毎日してるのに、突然何日もいなくなるとその……そういうこと考えちゃうじゃないですか」
「どういうことを考えていたんですか?教えてくださいよ」
「だ、だから……健斗さんとするときのこととか……」
「ふふっ、私のことを考えながらしていたんですか?」
「他に考える相手なんていないでしょ……もうやだ、恥ずかしい……」
「せっかく準備万端なわけですし、致しましょうか」
「帰ってきてすぐなのに?」
「ダメですか?」
「……健斗さん、したい?」
「ええ、ものすごく」
「ふふふっ、じゃあする」

さっきよりも深く口付けると、そのままおもちゃのスイッチを入れて動かし始めた。
自分で動かしていたときと全然違って、すぐに大きな快感の波が押し寄せてくる。
声がキスにのみ込まれる中、悶えていると体が大きく跳ねてあっけなくいってしまった。
キスから逃げて、どうにか呼吸をすると健斗さんは少し嬉しそうな表情をしていた。

「いつもよりもだいぶ早かったですね」
「はぁ……はぁ……自分でするのと全然違う……」
「まぁ、なるみさんの体のことは私のほうがよくわかっていますから」
「……これで終わり?」
「まさか」

健斗さんが身に着けているものを脱ぎ出して、すぐに自身のものをあてがう。
入ってくるその瞬間からおもちゃとは比較にならない圧迫感で、ぞくぞくしてしまう。
心も体もこれを待ち望んでいた。
いつもよりも余裕がなさそうな健斗さんの表情と動きで、余計に興奮してしまう。
ほぼふたり同時にいって、つながったまま健斗さんに全身で抱きつく。

「んふふっ、健斗さんもいつもより早かったですね」
「状況が状況ですから、仕方ないでしょう」
「はぁ……ひとりでするより健斗さんとしたほうが気持ちいいのって地味に困ります」
「ふふっ、私としては嬉しい限りですけどね。ふぅ……どうしましょうか。このまましてもいいですけど、一応お土産は買ってきてるんですよ」
「えー、じゃあお土産見たい」
「じゃあ、一旦向こうに行きましょうか」
「はぁい。健斗さん、いつもお土産ありがとうございます」
「いえいえ、私もなるみさんに何を買うか毎回楽しみにしていますから」
「お土産見た後でまた続きして?」

「言われなくても最初からそのつもりですよ」と健斗さんはまたキスを落とした。
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