第44話

文字数 1,012文字

健斗さんと一緒に洋画を見ていると、恋人同士が喧嘩をするシーンになった。
結構アグレッシブに喧嘩をしているのにそのままベッドにダイブして、事後になったら流れで仲直り。
そう言えば、少し前に「喧嘩の後に仲直りでするのは興奮する」的なコメントをネットで見た気がする。

「健斗さん」
「何でしょう」
「私たちも先々でああいう感じで致すことってあるんですかね?」
「……一応聞きますけど、ああいう感じというのは?」
「喧嘩した後の仲直りほにゃららです」
「なるみさんはしてみたいんですか?」
「うーん、そもそも喧嘩したくない……」
「でしょうね。私もです」
「というか、健斗さんが聖人すぎて喧嘩にならずに済んでるんですよね」
「そんなことはないと思いますけど」
「だって、私めちゃくちゃめんどくさいじゃないですか。生理前とか露骨にイライラしますし」
「めんどくさいと思ったことはないですね。女性の場合、ホルモンバランスの影響は仕方ないですし。それになるみさん、イライラしてもすぐに謝ってくるじゃないですか」
「でも、謝ればいいって話でもないですし……そのうち、愛想尽かされちゃうかも……」
「それはないですね。ひとりでイライラして、しょんぼりして謝ってくるまでの一連の流れも含めて可愛いなと思っているので」
「健斗さん、私に甘すぎません?」
「甘やかしている自覚はありますが、だからといってなるみさんがわがまま放題になるわけでもないですし、問題はないと思いますけど。むしろ、もっとわがままを言ってくれてもいいんですけどねぇ」
「わがまま言ってますよ。私に直してほしいところとかないんですか?」
「ないですね」
「不満は?」
「ないです」
「なんかこう……もうちょっとこうなったらいいな、みたいなことは?」
「ふふっ、ないですよ」
「えーっと、じゃあ……困るなぁとか困ったなぁって思ったことは?」
「困る……」
「お、思い当たることが……?」
「強いて言うなら、好きすぎて困っています」
「はい?」
「付き合うようになって、一緒に暮らすようになってそれなりに時間が経っているわけですが、いまだに好きすぎて困っているんですよ。時間が経てば多少は落ち着くかと思っていたんですが、さっぱりです」
「……わ、私はどうしたらいいんですかね?」
「ふふっ、どうもしなくていいですよ。なるみさんは私に対して何か不満はないんですか?」
「不満はないですけど、尊すぎて困ってます」
「そうですか、お互い困ったものですねぇ」
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