第25話

文字数 1,199文字

朝起きておはようのキスをして、一緒に朝ご飯を食べて、仕事に行く健斗さんを見送る玄関ではいってらっしゃいのキスをする。
仕事から帰ってきたらおかえりなさいのキスをして、一緒に晩ご飯を食べて、一緒にお風呂に入って、一緒に寝る。
ご飯を作るのはいつも健斗さんだし、健斗さんは料理上手。
出張で何日か家にいないときでも、私の分を作り置きしてくれる。
掃除もしてくれるし、お風呂に入って体を洗うのも髪を洗うのも、お風呂上がりのドライヤーも全部健斗さんがあれこれと世話をしてくれる。
私は家でマイペースに仕事をするだけなので、正直、めちゃくちゃ甘やかされている。
付き合う前の健斗さんのイメージと家での健斗さんにはギャップがありすぎる。
幸せすぎて、私はこのままで本当に大丈夫なのだろうかと思ってしまうくらい。
今日は健斗さんの仕事が休みの日で、いつものようにソファーでふたり並んでテレビを見ていた。
しっかりと指を絡めるように手をつないで、健斗さんの肩にもたれかかる。

「……健斗さんって女の人を甘やかしたいタイプなんですか?」
「はい?」
「でろんでろんに甘やかして愛でたいタイプですか?」
「いえ、別に……そういう趣味は特にないと思いますけど。何でですか?」
「だって……なんかすごい甘やかされてるから……前に付き合ってた人にもこんな感じだったんですか?」
「いえ、別に普通でしたよ。そもそも前に付き合っていた人には『冷たい』とか『つまらない』とかそういう理由でふられていますし」
「あー、そうでしたね。相手の人から何度も告白されて、折れて付き合ったらすぐふられたんでしたっけ」
「そうですよ。まぁ、実際に付き合ってみたらイメージと違ったというところでしょうかね」
「あー、でも私も付き合う前の健斗さんのイメージと今じゃだいぶ違いますよ」
「……そうなんですか?」
「付き合う前はあんまり女の人に興味なさそうだから、私がめちゃくちゃ頑張らないとすぐふられちゃうって思ってました」
「そうですか。それで、今はどうなんですか?」
「めちゃくちゃ甘やかされて、私何もしてなくてどうしようって思ってます」
「ふふっ、何もしていないことはないでしょう?」
「だって私、家で仕事してるだけですよ?めちゃくちゃ甘やかされてるというか、尽くされているというか……健斗さん、無理してないですか?」
「ふふっ、無理はしていないですね。全部好きでやっていることなので」
「私はめちゃくちゃ幸せなんですけど、私何にもお返しできてないですよ?」
「私としてはなるみさんがいてくれるだけでいいんですよ」
「うーん……」
「それだけあなたのことが好きだということです。何か問題がありますか?」
「な、ないです……。あー、でも……」
「でも?」
「甘やかされてダメ人間になりそうです」
「まぁ、大丈夫でしょう。万が一、本当にダメ人間になってしまったら責任はとりますよ」
「ふふふ~、よろしくお願いします」
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