べレーゼへの道標
文字数 2,035文字
『ここが、くうりが言っていた場所か?』とユリクが口にする。
目の前に見えるのは、激しい流れと共に打ち付ける滝。
それを目の当たりにして疑いを持たないのは誰一人として居はしないのではないだろうか。
そして、例に習うかのように指を指しユリクは信じ難いと言いたげな表情を浮かべている。
しかし、くうりは二人より二歩、前に進むと笑顔で振り向く。
「そうです。ここが僕の街と通じる入口なのですッ!」
「滝が入口? それはどう言った事だ、くうり」
「見ていれば分かりますよっ!」
そう言い放つと、滝の目の前まで突き出ている狭い崖の尖端へと足をくうりは運んだ。
一人で、軽い足取りで。さながら、スキップを踏むかのようにリズミカルに。
「……くうり?」
白い飛沫を上げながら流れ落ちる滝。それを囲うかのように生い茂る草花木果。
尖端には風になびかれる紫色のローブを羽織った一人の女性くうり。
その光景は、異様としか言いようが無い。
不適合とも言える絵が、逆に緊迫感を与えていた。
くうりは、その場に座り込むと両手を地面に接着させる。
瞑想するかのように目を瞑り、数分の沈黙が続く中、徐々に変化が訪れ始めてゆく。
──それは……。
「なんだ? 森が騒がしい。くうりは一体、あそこで何をしているというんだ? それに、くうりのアレは一体……」
そう、まるで、くうりを中心に波紋が起こっているような現象。
色とりどりの輪の様なものが、くうりを中心に波紋を描き起こっているわけでわない。
けして、それを視認出来る訳でもなく、故に波紋と断定する事にも無理がある。
しかし、他に例える言葉が見当たらないのだ。
まるで、鼓動のように、一定の感覚で円を描くように舞う砂煙や木々達。
別の言い方をすれば、くうりを中心に大気が動いている──という事だろうか。
それは、まさに目を疑う光景に違いない。
「くうりさん、凄い方なんですね」
「セアーも、何か分かるのかっ?」
「いいえ。私達に、そう言った力があるとは聞いた事がありません」
「そうなのかっ?」
「はい。けれど、私の暗闇の中で、ただ一点。白いモヤの様な物が見えている気がします。そして、それがきっと……くうりさんだとおもうんです」
まるで肌で……いや、心の奥で感じるかのようにセアーは左胸を抑えながら目を閉じる。
それとは逆にユリクは二人を見守るかのように目を動かす。
「やっと、応えてくれましたっ。今日はいつもより──っあ、そうか。今日は僕ひとりじゃないから警戒しちゃったんですねっ」
滝によって生じた彼方此方に飛び散る水飛沫。
それが、くうりの周りに集まってくる。
それは、肉眼でも分かる程に確実なもの。
まるで、それと遊ぶかのように、くうりは触れては笑を浮かべる。
「じゃあ、いきますかっ!」
滝に向け左手を翳すと、それに従うかの様に集まった飛沫……今となっては水球が重なり一本の道──滝に向けての橋を形成して行く。
人一人歩ける程の狭い橋が、崖の尖端と滝を繋いだのだ。
一仕事終えたかのように、額を拭い。
くうりは、ジャンプをしながら、両手を上下に振り二人を尖端へと招く。
「終わったのかっ? と言うか、こりゃあーすげぇ……一体どうやって」
「どうやってって……んー。簡単に言えば自然との対話──ですかねっ?」
「自然との対話??」
「そうです。っと、この子達も疲れてしまいます。話しは、説明は後でします! 今は行き急ぎましょうっ」
そう言うと、くうりは橋まで進み手を伸ばす。
しかし、いくら橋とは言え。本質は水でしかない。濁りの無い綺麗な水は落差のある真下を鮮明に映し出していた。
それに、臆しているのか顔を引き攣りながら歩幅の狭い一歩を踏み出すユリクに対し、くうりは半ば強引に引っ張る。
「おまっ!! 危ないだろっ!! 落ちたらどうするんだよっ!」
「大丈夫ですよっ。この子達は逞しいんですよっと!!」
何をするのかと思えば、ユリクの目の前で思い切りジャンプをして見せたのだ。
『言って分からないのなら、体で分からせる』なんて言葉があるが。
こればかしは、流石にユリクも腰が引けているようにも見えた。
「セ……セアー。大丈夫かっ??」
「はい? 私は大丈夫ですよっ?」
「ふむふむ。ユリ君は少しセアーちゃんを見習うべきですねっ!」
歩き出す三人の足元は、それぞれの波紋を描く。
日が照らす水の架け橋は反射し輝き。
歩き終えた足元の波紋は気泡となり静かに消える。
それは、美しく神秘的だった。
「このまま進みますよっ!!」
「このままって! だから滝はどうす──」
まるで、カーテンのように・避けているかのように、くうりが触れる瞬間。
その場所だけ滝が開く、そしてユリクの腕を掴んだまま、その中へと入っていった。
目の前に見えるのは、激しい流れと共に打ち付ける滝。
それを目の当たりにして疑いを持たないのは誰一人として居はしないのではないだろうか。
そして、例に習うかのように指を指しユリクは信じ難いと言いたげな表情を浮かべている。
しかし、くうりは二人より二歩、前に進むと笑顔で振り向く。
「そうです。ここが僕の街と通じる入口なのですッ!」
「滝が入口? それはどう言った事だ、くうり」
「見ていれば分かりますよっ!」
そう言い放つと、滝の目の前まで突き出ている狭い崖の尖端へと足をくうりは運んだ。
一人で、軽い足取りで。さながら、スキップを踏むかのようにリズミカルに。
「……くうり?」
白い飛沫を上げながら流れ落ちる滝。それを囲うかのように生い茂る草花木果。
尖端には風になびかれる紫色のローブを羽織った一人の女性くうり。
その光景は、異様としか言いようが無い。
不適合とも言える絵が、逆に緊迫感を与えていた。
くうりは、その場に座り込むと両手を地面に接着させる。
瞑想するかのように目を瞑り、数分の沈黙が続く中、徐々に変化が訪れ始めてゆく。
──それは……。
「なんだ? 森が騒がしい。くうりは一体、あそこで何をしているというんだ? それに、くうりのアレは一体……」
そう、まるで、くうりを中心に波紋が起こっているような現象。
色とりどりの輪の様なものが、くうりを中心に波紋を描き起こっているわけでわない。
けして、それを視認出来る訳でもなく、故に波紋と断定する事にも無理がある。
しかし、他に例える言葉が見当たらないのだ。
まるで、鼓動のように、一定の感覚で円を描くように舞う砂煙や木々達。
別の言い方をすれば、くうりを中心に大気が動いている──という事だろうか。
それは、まさに目を疑う光景に違いない。
「くうりさん、凄い方なんですね」
「セアーも、何か分かるのかっ?」
「いいえ。私達に、そう言った力があるとは聞いた事がありません」
「そうなのかっ?」
「はい。けれど、私の暗闇の中で、ただ一点。白いモヤの様な物が見えている気がします。そして、それがきっと……くうりさんだとおもうんです」
まるで肌で……いや、心の奥で感じるかのようにセアーは左胸を抑えながら目を閉じる。
それとは逆にユリクは二人を見守るかのように目を動かす。
「やっと、応えてくれましたっ。今日はいつもより──っあ、そうか。今日は僕ひとりじゃないから警戒しちゃったんですねっ」
滝によって生じた彼方此方に飛び散る水飛沫。
それが、くうりの周りに集まってくる。
それは、肉眼でも分かる程に確実なもの。
まるで、それと遊ぶかのように、くうりは触れては笑を浮かべる。
「じゃあ、いきますかっ!」
滝に向け左手を翳すと、それに従うかの様に集まった飛沫……今となっては水球が重なり一本の道──滝に向けての橋を形成して行く。
人一人歩ける程の狭い橋が、崖の尖端と滝を繋いだのだ。
一仕事終えたかのように、額を拭い。
くうりは、ジャンプをしながら、両手を上下に振り二人を尖端へと招く。
「終わったのかっ? と言うか、こりゃあーすげぇ……一体どうやって」
「どうやってって……んー。簡単に言えば自然との対話──ですかねっ?」
「自然との対話??」
「そうです。っと、この子達も疲れてしまいます。話しは、説明は後でします! 今は行き急ぎましょうっ」
そう言うと、くうりは橋まで進み手を伸ばす。
しかし、いくら橋とは言え。本質は水でしかない。濁りの無い綺麗な水は落差のある真下を鮮明に映し出していた。
それに、臆しているのか顔を引き攣りながら歩幅の狭い一歩を踏み出すユリクに対し、くうりは半ば強引に引っ張る。
「おまっ!! 危ないだろっ!! 落ちたらどうするんだよっ!」
「大丈夫ですよっ。この子達は逞しいんですよっと!!」
何をするのかと思えば、ユリクの目の前で思い切りジャンプをして見せたのだ。
『言って分からないのなら、体で分からせる』なんて言葉があるが。
こればかしは、流石にユリクも腰が引けているようにも見えた。
「セ……セアー。大丈夫かっ??」
「はい? 私は大丈夫ですよっ?」
「ふむふむ。ユリ君は少しセアーちゃんを見習うべきですねっ!」
歩き出す三人の足元は、それぞれの波紋を描く。
日が照らす水の架け橋は反射し輝き。
歩き終えた足元の波紋は気泡となり静かに消える。
それは、美しく神秘的だった。
「このまま進みますよっ!!」
「このままって! だから滝はどうす──」
まるで、カーテンのように・避けているかのように、くうりが触れる瞬間。
その場所だけ滝が開く、そしてユリクの腕を掴んだまま、その中へと入っていった。