青く光る眼光の意味
文字数 2,644文字
テントの外では、優しい川の流れの音・夏ならではの虫の声・野鳥の高い鳴き声・朝日で光る朝露・透き通る深緑の葉っぱが夏の風情を醸し出していた。
その中、薪を燃やし煙を出しながらユリクは黙々と調理を続け。
昨日と同様に座っているセアーは、昨日と同じ鼻歌を気持ちよく奏でながら体を揺らす。
「セアー。そうやぁー昨日もその鼻歌聴こえていたけど。好きな歌なのかっ?」
「好き……と言うか。好きな人が良く眠る前とかに歌ってくれた思い出の歌ですっ」
「それは、母親……か?」
「そうですっ。お母さんが良く聴かせてくれてましたっ」
「思い出なんか言うなっ。それじゃあ……まるで、もう聴けないみたいじゃないかっ」
励ますかのように力強く、セアーを見つめ云うユリクに対し膝で顔を隠し頷いた。
「なんか、すいませんっ……そうですよねっ?
えへ……へへっ」
その時生まれた一瞬の間にセアーは、一体何を考え、何を思ったのだろうか。
それは、余りにも不自然で違和感があるものだからこそ、ユリクもまた、目を閉じ何かを考えているかのような表情を作り上げたのだろう。
「無理して、笑顔を作るなよ。口元が笑っていても目尻からは涙が……。セアー、お前は一体何を隠している?」
『えっと……』と濁らせ、言いにくそうなセアーは、口を膝に付けながら黙り込む。
しかし、それだけみても何かがあると感じるのは普通だ。
ユリクはセアーに近寄り、真正面に座り込む。
「無理に言わなくていいんじゃないかなッ? いや。無理に言わせる事ないんじゃないかなッ? ユリ君」
テントの中で聞いていたのだろう。くうりはテントから顔を出しながら冷静に提示した。
しかし、その冷静な赴きは先程までの、くうりとは反し過ぎていて変な感じすらしてしまう。
さながら、二重人格のようだ。
「なっ! なんだよ、急にッ!!」
「急にでも何でも構わない。気になるのは仕方が無いと思う。だけれど、何かを気にしているセアーちゃんの気持ちも考えてあげるべきだよ」
くうりは、付け加えるかのように『第三者だからこそ、見えてくるものがある』と、一字一句を丁寧に滑舌良く話した。
しかし、その言葉は今の状況の中、何よりもの説得力があったのだろう。
ユリクは反論する事なく、立ち上がり、一言『ごめんな』と誤りを認めたのだ。
「こちらこそ、すいません。でもこれは、まだ言えないのです……二人の為にも」
「そうか。なら、言える時に話してくれればいいからさっ。──それに、顔を出してないで、くうりも早く来いよ。聞きたいこともあるんだ」
空気を変えるかのように、少し大きな声を出し話を切り替えた。
しかし、そのユリクの瞳は、重たくなってしまった空気を変える助けをくうりに求めてるかのようにも見える。
と言うよりも、初対面でここまで親密に接しられると言うのは、やはりあの二人の育て方によるものが大きいに違いない。
良くも悪くも警戒心と言うのが微塵も感じないのだから。
「ふむふむ……聞きたい事があるんですねッ?」
少し、“ニヤッ"と何かを思い付いたかのように笑みを浮かべながらテントから顔を出す。
何故、呼ばれているのに出て行こうとしないのか。それは、きっとこれから分かる事。
「ぁあ、ある、だから──」
「僕は今、お腹すいてますっ……空きすぎていて、質問に答える事も希望に応える事もできないのです」
「だぁあ!! 分かってるっつーの! 最初からそのつもりだってーの!! お前、もしかして、こうなる事を見越して話に入って来たのかっ?」
「いえいえ。僕は偶然、耳に入ったので口出しを失礼ながらしたのです。この耳は、些細な音も逃さないのです。──獣人には負けますけどっ」
ふらつきながら、“ノソノソ”とユリク達の傍に近寄る。
「……獣人?」
初めて聞いたこのような反応をするユリクに対して、セアーが遠慮気味に人差し指でユリクを叩いた。
何かを言いたげな表情を作るセアーの手を取り、ユリクは『どうした?』と言葉にする。
「獣人は、私と、くうりさんと一緒です……」
「一緒って言うのは? 残念ながら、二人は似ても似つかないぞっ?」
「もー、ユリ君。今はそんな話をしている場合じゃないですよ?」
セアーの隣に座っている、くうりは再び真剣な趣を浮かべ、顔を顰め下唇を噛み締める。
その、気迫にユリクは圧巻されたのだろうか。
『そうだな』と、口にすると話を戻すかのように『じゃあ』と口を開く。
「まず、くうりは本当にエル──」
「ご飯です!」
「えっ? くうり、何を……」
「だから、そんな場合じゃないです! ご飯です!」
それから、数秒の間、川の音のみが三人を包み込み。
ユリクは堪らず頭を抱える。
「もしかして、さっきの真剣な表情は……」
「ご飯は、大事です!! って、セアーちゃんが……」
「人のせいにするなっ!!」
二人のやり取りに一番反応をしめしたのは、セアーだった。“クスクス”と肩を揺らし口元を手で隠しながら笑を浮かべる。
さっきまでの、重たい空気はどうにかこうにか収集はついたのだろう。
その可愛い笑顔にユリクも、“ホッ”と肩をおろす。
「まぁ、いいや。とりあえず、くうりが言うように飯にするかっ!!」
「はいっ!! 楽しみですッ!!」
「ふむふむ、待ちに待った他種族のご飯です! 俄然興味が湧きます! 湧き上がります!!」
幅が広い葉っぱを川でゆすぎ。
軽く燻し、その上に炊いていたご飯を盛り始めた。
その、艶やかで白いご飯を彩るかのように、様々な色をした山菜が混ざり湯気を出す。
山菜の甘い匂いが食欲を余計に駆り立て、ユリクを除く二人はその匂いに堪らず生唾を飲み込む。
差し出された、目の前のご飯に、二人の心は踊っていたのだろう。
「もう、食べていいんですかっ?」
「待て待てっ! 最後にゴマを二振りほどして……っと。よし! 二人共食べていいぞっ!!」
ご飯を目の前にした嬉しいそうな二人よりも、一番嬉しそうな表情を浮かべていたのは他ならぬユリクだった。
しかし、作ったご飯をここまで、楽しみにしてくれている。と言う光景は、きっととてつもなく気持ちが良いものなのだろう。
「じゃあ、頂きますっ!」
「いただきますっ!!」
「頂きますです!!」
その中、薪を燃やし煙を出しながらユリクは黙々と調理を続け。
昨日と同様に座っているセアーは、昨日と同じ鼻歌を気持ちよく奏でながら体を揺らす。
「セアー。そうやぁー昨日もその鼻歌聴こえていたけど。好きな歌なのかっ?」
「好き……と言うか。好きな人が良く眠る前とかに歌ってくれた思い出の歌ですっ」
「それは、母親……か?」
「そうですっ。お母さんが良く聴かせてくれてましたっ」
「思い出なんか言うなっ。それじゃあ……まるで、もう聴けないみたいじゃないかっ」
励ますかのように力強く、セアーを見つめ云うユリクに対し膝で顔を隠し頷いた。
「なんか、すいませんっ……そうですよねっ?
えへ……へへっ」
その時生まれた一瞬の間にセアーは、一体何を考え、何を思ったのだろうか。
それは、余りにも不自然で違和感があるものだからこそ、ユリクもまた、目を閉じ何かを考えているかのような表情を作り上げたのだろう。
「無理して、笑顔を作るなよ。口元が笑っていても目尻からは涙が……。セアー、お前は一体何を隠している?」
『えっと……』と濁らせ、言いにくそうなセアーは、口を膝に付けながら黙り込む。
しかし、それだけみても何かがあると感じるのは普通だ。
ユリクはセアーに近寄り、真正面に座り込む。
「無理に言わなくていいんじゃないかなッ? いや。無理に言わせる事ないんじゃないかなッ? ユリ君」
テントの中で聞いていたのだろう。くうりはテントから顔を出しながら冷静に提示した。
しかし、その冷静な赴きは先程までの、くうりとは反し過ぎていて変な感じすらしてしまう。
さながら、二重人格のようだ。
「なっ! なんだよ、急にッ!!」
「急にでも何でも構わない。気になるのは仕方が無いと思う。だけれど、何かを気にしているセアーちゃんの気持ちも考えてあげるべきだよ」
くうりは、付け加えるかのように『第三者だからこそ、見えてくるものがある』と、一字一句を丁寧に滑舌良く話した。
しかし、その言葉は今の状況の中、何よりもの説得力があったのだろう。
ユリクは反論する事なく、立ち上がり、一言『ごめんな』と誤りを認めたのだ。
「こちらこそ、すいません。でもこれは、まだ言えないのです……二人の為にも」
「そうか。なら、言える時に話してくれればいいからさっ。──それに、顔を出してないで、くうりも早く来いよ。聞きたいこともあるんだ」
空気を変えるかのように、少し大きな声を出し話を切り替えた。
しかし、そのユリクの瞳は、重たくなってしまった空気を変える助けをくうりに求めてるかのようにも見える。
と言うよりも、初対面でここまで親密に接しられると言うのは、やはりあの二人の育て方によるものが大きいに違いない。
良くも悪くも警戒心と言うのが微塵も感じないのだから。
「ふむふむ……聞きたい事があるんですねッ?」
少し、“ニヤッ"と何かを思い付いたかのように笑みを浮かべながらテントから顔を出す。
何故、呼ばれているのに出て行こうとしないのか。それは、きっとこれから分かる事。
「ぁあ、ある、だから──」
「僕は今、お腹すいてますっ……空きすぎていて、質問に答える事も希望に応える事もできないのです」
「だぁあ!! 分かってるっつーの! 最初からそのつもりだってーの!! お前、もしかして、こうなる事を見越して話に入って来たのかっ?」
「いえいえ。僕は偶然、耳に入ったので口出しを失礼ながらしたのです。この耳は、些細な音も逃さないのです。──獣人には負けますけどっ」
ふらつきながら、“ノソノソ”とユリク達の傍に近寄る。
「……獣人?」
初めて聞いたこのような反応をするユリクに対して、セアーが遠慮気味に人差し指でユリクを叩いた。
何かを言いたげな表情を作るセアーの手を取り、ユリクは『どうした?』と言葉にする。
「獣人は、私と、くうりさんと一緒です……」
「一緒って言うのは? 残念ながら、二人は似ても似つかないぞっ?」
「もー、ユリ君。今はそんな話をしている場合じゃないですよ?」
セアーの隣に座っている、くうりは再び真剣な趣を浮かべ、顔を顰め下唇を噛み締める。
その、気迫にユリクは圧巻されたのだろうか。
『そうだな』と、口にすると話を戻すかのように『じゃあ』と口を開く。
「まず、くうりは本当にエル──」
「ご飯です!」
「えっ? くうり、何を……」
「だから、そんな場合じゃないです! ご飯です!」
それから、数秒の間、川の音のみが三人を包み込み。
ユリクは堪らず頭を抱える。
「もしかして、さっきの真剣な表情は……」
「ご飯は、大事です!! って、セアーちゃんが……」
「人のせいにするなっ!!」
二人のやり取りに一番反応をしめしたのは、セアーだった。“クスクス”と肩を揺らし口元を手で隠しながら笑を浮かべる。
さっきまでの、重たい空気はどうにかこうにか収集はついたのだろう。
その可愛い笑顔にユリクも、“ホッ”と肩をおろす。
「まぁ、いいや。とりあえず、くうりが言うように飯にするかっ!!」
「はいっ!! 楽しみですッ!!」
「ふむふむ、待ちに待った他種族のご飯です! 俄然興味が湧きます! 湧き上がります!!」
幅が広い葉っぱを川でゆすぎ。
軽く燻し、その上に炊いていたご飯を盛り始めた。
その、艶やかで白いご飯を彩るかのように、様々な色をした山菜が混ざり湯気を出す。
山菜の甘い匂いが食欲を余計に駆り立て、ユリクを除く二人はその匂いに堪らず生唾を飲み込む。
差し出された、目の前のご飯に、二人の心は踊っていたのだろう。
「もう、食べていいんですかっ?」
「待て待てっ! 最後にゴマを二振りほどして……っと。よし! 二人共食べていいぞっ!!」
ご飯を目の前にした嬉しいそうな二人よりも、一番嬉しそうな表情を浮かべていたのは他ならぬユリクだった。
しかし、作ったご飯をここまで、楽しみにしてくれている。と言う光景は、きっととてつもなく気持ちが良いものなのだろう。
「じゃあ、頂きますっ!」
「いただきますっ!!」
「頂きますです!!」