第42話

文字数 739文字

 1階・昇降口前。
登美はハッと我に返り、慌てふためきながら周囲を見回す。

「何処、ここ……」

 これ迄と違って視界が開けている。
薄暗くはあるが、転々と灯る蛍光灯の明かりと外灯が目に付く。
見慣れた校内だが、懐かしさを感じる。

「ウソ……」

 登美は昇降口に掲げられる時計を見上げ、目を見開く。


「時間、動い、てる……」


 秒針は正常に時を刻み、現在時刻は20時を指す。


「戻って来たんだ……」


 憔悴する弓絵と、混乱した義也が何処に飛ばされたのか、登美は校内を駆けずり回って探す。
他にも誰か戻って来ているかも知れない、一縷の望みを持って。
1階・2階・3階、隈なく見て回るが、人の気配は無い。
死体も転がっていないから、やはり戻って来られたのは登美1人だけの様だ。

「どうしよ、」

 やるべき事は分かっているだろうに、登美は戻れた事に混乱して頭の中が飽和状態。

「えっと、えっと、……マジふざけんなって、」

 焦燥。沢山の会話を思い返し、漸く閃く。


『向こうとコッチを繋ぐ何らかの鍵ってヤツがある筈なんだって。
ソレを始末すれば この空間は閉じる』


「そうだ!焼却炉!」


『明日には先生がゴミを焼却するって頭はあるンだよな!?
俺達が その時間までに戻れなかったら、自動的にアウトって事も解かってンだよな!?


「見っけなきゃ! あの紙、おまじないの紙!」

 今一度 昇降口に舞い戻るも扉が開かない。
最終下校も過ぎたこの時分では、とっくに施錠されている。

「だったら、……職員玄関!」

 校内の灯り点いているのだから、職員玄関は確実に開いている筈だ。

「ハァ、ハァッ、マジきつッ、」

 校内を走り回ってヘトヘトになった登美の足は歩くよりも遅い。
ソレでも1歩1歩を先に進ませる。
時刻は既に20時20分。貴重な時間を大分ロスしている。

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