第30話

文字数 1,524文字

「おまじないって言っても良くあるヤツで、守護霊とか天使とか呼び出すみたいな、そんな感じので……どうせ冷やかし何だしって思ったら、後始末も面倒臭く感じて……」
「後始末?」
「おまじないに使った紙を3等分に切って、夫々 家に持ち帰って、3日以内に燃やす」


「3日目―― もしかして、ソレが今日の16時だった?」

!!


 卒業制作が面倒で参加したくなかったとは言え、真面目に取り組んでいる弓絵を気しない事は無かったのだ。
3人は度々 時間を確認し、まじないを終えたら作業に加わろうと話していたのを思い出す。
そして、まじないを終えた時、登美が見上げた時計の針は丁度16時を指していた。


「ウソでしょ……16時、だった……」


 登美の中で全てが一致。
その日から数えて3日目の16時に、暗闇校舎への扉が開かれたのだ。
こんな偶然があるだろうか、他に切欠と呼ぶべき事象はあるだろうか、登美は体を震わせて その場に座り込む。

「そ、そんなの……だって、あんなの、ただの、噂……」
「燃やしたの? 約束通り、燃やしたの?」

 理恵が何度も聞いていた事だ。登美は肩を竦めて顔を伏せる。

「し、信じてなかったけど、あんなのッ……
でも、何か不気味だし気持ち悪いから、家には持って帰りたく無くて……
燃すなら家じゃなくてもイイかって思って、学校の焼却炉に……」
「焼却炉……」
「焼却炉なら、先生がやってくれるからッ」

「登美チャン、先生が焼却炉でゴミを燃やすのは、明日だよ……」

「ぁ……」

 在校生7人ばかりの校舎では、大したゴミも出ないのだ。
その為、教師は週末にのみ焼却炉に点火する。
そんな事は登美にも分かっていただろうに、然し“燃やせば良い”と高を括っていたからこそ、日にちの事は二の次にしていたのだ。
今更ながら、今日が3日目で、明日では遅い事に気づく。


「だって、1日ぐらい……」


 本当に自分の過失で こんな事態を招いたなら、平静ではいられない。
登美1人の背に負いきれるものでは無い。必死に頭を振って弁明を見つける。

「で、でも待ってよっ、やっぱ違うと思うっ、だって、理恵が言ってた、
悪霊が殺すのは関係者だけだって、弓絵チャンは関係ないじゃんか!」
「それなら、義也と彗君だって関係ないじゃないの!」
「そ、それは……書いたから、紙に……俊典だけじゃくて、高野クンと西岡の名前も……」
「!」
「だからッ、アレが原因だってなら、弓絵チャンがココにいるのは可笑しいんだよッ、」

 まじないに参加した登美・理恵・亜希子と、名前を書かれた、義也・彗・俊典。
この6人が関係者全員なのであって、弓絵は蚊帳の外なのだ。
この暗闇校舎が悪霊の仕業と仮定する事は出来ないと、登美は強く訴える。

(確かに……何が原因か何て決定づける事は出来ない。
でも、1つの可能性ではある。
登美チャンが焼却炉に捨てた、おまじないの切れ端……
まだ燃やされずに残ってる それを燃やせば、この空間が閉じるかも知れない――)

 何にせよ、今は出来る事をするしかない。

「登美チャン、燃やそう。今からでも、その紙を。
それで違ったなら、また他の何かを考えよう」
「燃やすって言っても、どうやってっ?
ココは向こうと何もかも同じだけど、焼却炉は外なんだよ!?
出られないじゃん……」

「元の世界に戻って、次の瞬間移動……1時間以内に燃やす」

「はぁ!? 戻るって、いつ!? いつ戻れるか分かんないのに!?
それまで ここでどうすんの!?
「それまで、生き延びるの……」

 無理難題。登美は天を仰ぐ様に首を寝かす。
然し、元の世界に戻れる機を狙う以外に成す術は無い。

(やるしかない……やるしかないんだ!!

「義也達と合流して、ちゃんと説明しよう。これからどうすべきなのか」
「うん、」


*
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み