第10話

文字数 880文字

 彗は考え込んだ後、静かに頷く。


「確認して来る」


 この言葉に一同はギョッと目を丸める。

「呼んでも返事が無いだけで死んだとするにはね。
階段から落ちて気絶しているだけかも知れない」

 理恵の早合点。その可能性も考えられる。
然し、そうでは無かったらを考えると一同の腰は重い。

「行って来るよ。皆はココで待っていて」

 端から1人で行くつもりでいたのだろう彗が教室を出ようとすれば、弓絵はヨロヨロと立ち上がり、一同を見やる。

「ひ、1人は駄目! 皆で行動した方が良いと思うっ、
こうゆう状況だし…その方が安全だと思うっ、、」

 たった6名なのだ。
集団では無い以上、敢えて別行動を取る必要は無い。
奇妙な音や騒ぎに加え、第三者が校内にいる気配も確認している。
ココは一致団結し、互いの安全を確保し合うべきと弓絵が提案するも、理恵は大きくと頭を振る。

「ァ、アタシは、ィ、イヤっ……こ、怖いっ怖いモン!!

 両手で顔を覆い、何度と無く首を横に振っての拒絶。
恋人である俊典の無事を願う思いはあるが、暗闇の校舎を歩く事も、異様な現場を再度 目にするのも御免なのだ。ソレは登美も亜希子も同じ事。

「き、気絶してるだけだったら、その内 勝手に目ぇ覚ますんじゃない……?
動ければ、自力で教室に戻って来ればイイんだし……」

 登美は事を深刻に考えるのが苦手だ。
少し笑い混じりに言えば、亜希子は妙に納得して頷く。

「そ、そぉかも……下手に動かしたりするのも、良く無いかも知れないよ?」

 一致団結して教室待機しようと言うのが3人の考え。
然し、クラスメイトとして見て捨てる事ができないのが、慎重派で思いやり深い彗なのだ。

「うん。ソレも踏まえて代表して僕が見て来るよ。
義也、ココはお前に任せるから」
「彗っ、」
「彗君っ、、」

 結局、彗の背を見送る事になってしまうから、弓絵は右往左往。
雖も、この不可思議な中を1人で行かせるのは余りにも危険だ。
弓絵は義也を振り返り、ビシッと指を指す。

「私も行く! 本当に任せたからね、義也!
直ぐ戻って来るから、絶対にココを動かないで!」

「弓絵!?

 弓絵は彗の後を追い、教室を飛び出す。


ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み