第12話

文字数 728文字

ズルズル、、ズズズズ……


(コッチへ来る……来ないで、来ないで!!


ズズズズズ……


!? ……何か、言っている?)

 音の間に間に呟かれるノイズ交じりの声が何を言ってるのか、弓絵はドアにへばり付いて耳を澄ませる。


《ナカミぃ……ナカミぃ……》


 意味が解からない。ついでに、真っ当とも思えない。

(ナカミって? 名前? それとも中身?)

 声は音と共に南校舎方向へと遠のき 聞こえなくなる。
弓絵は四つん這いになって廊下の左右を覗く。誰もいない。今の内に移動しておこう。
蹴躓きそうになりながら中央階段を2階に駆け上がると、今度は人影にブチ当たる。


ドン!!


「きゃぁ!!
「ぅわッ、、」

 ドサリ!! と弾き飛ばされて倒れるも、弓絵は身構える様に素早く起き上がる。
あの音の持ち主かも知れない恐怖心に握り締めた携帯電話のライトを向ければ、そこには登美が座り込んでいる。

「登美チャンっ、」
「な、何だ、、弓絵チャンかぁ、、あぁ良かったぁ……」
「教室にいたんじゃないのっ?」
「いたよッ、、いたけどまた南校舎に飛ばされたンだってッ、、
2階だったし、俊典 見ちゃったら最悪だと思って慌てて逃げて来た、、」
「そ、そう……南校舎なら、彗君とは会わなかった?」
「いたら一緒にいるってばッ、」
「そうだよね……」

 きっと、彗もお門違いの場所に飛ばされているに違いない。
登美も彗の安否は気になるが、だからと言って この状況で自分がどうこう出来るとも思っていない。

「弓絵チャン、早く逃げようよ!」
「でも、出口が、」
「あぁもぉ! こっから出られないにしろ、一先ず教室に戻った方がイイって!」
「ぅ、うん、」

 皆が教室に戻って来るかも知れない。
登美は立ち上がると弓絵の腕を引っ張り、それとなく先を歩かせる。
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