第23話

文字数 1,050文字

 暗闇のトイレは不気味さが増す。

「ぅわ、マジ最悪……」

 残念な事に、ここも照明が点かない。
然し、水は流れる様だからマシだと思う事にしよう。

「ねぇ、ドア閉めないでもイイ?」
「え゛?」
「だ、だってぇ、ドア閉めるの、怖いから……」
「ぁぁ、まぁねぇ……」
「別に女同士なんだから良くない? アタシは開けて入る」

 デリカシーだのと言っている余裕は無い。
3人は揃って個室に入ると、いつでもビニール紐を引っ張る準備を整え、ドアだけは開けて腰を下ろす。

「先に済んでも待っててねっ?」
「分かってるってッ、あぁもぉヤダ、ホント」
「あのさ、さっきの話なんだけど」

 恐怖を紛らわせる為にも話を途切れさせたくない。

「なに? なに?
さっきの話って、もしかして、廊下で理恵チャンが見たモノのコト?」
「亜希子しつこい! ソレは目の錯覚って言ったでしょ!」
「ゴメン……」
「そうじゃ無くて、弓絵チャンが言ってたでしょ?
どうして こんな目に、とか。どうして今日なのか、とか」
「そうだっけ? ってか、水流すからね?」

 登美はハンドルを捻って水を流す。

「待って! 登美チャン待っててね! ……ねぇ!」
「ハァ……はいはい。ヒモ引っ張ってないで早くしろってばッ」
「だからさ、聞いてよッ、」

 話の腰を折られて不機嫌になる理恵も水を流して個室を駆け出ると、登美と並んで手を洗う。

「登美も亜希子も、今日ってさ、あの日だけど覚えてる?」
「何? あの日って」
「3日目」
「はぁ? 生理?」
「違うって! アタシはマジメな話してんだから!」
「はいはい、静かにしろよぉ……アレでしょ? 私もさっき思い出したけど。
ってか、弓絵チャンや西原に笑われるよ? あんなの迷信なんだから」

 亜希子と登美の言う『3日目』とは何なのか。

「迷信だけどさ……
ソレでも登美は参加したでしょ? ソレって、少しは信じたからじゃないの?」
「別に。理恵がメンバー足んないって言うから、私も亜希子も手伝っただけだし」
「何ソレっ、面白がってたクセに……」
「そりゃそぉでしょ。
人のイナイ3人だけの教室で、手を繋いで呪文を唱えたら両想いになれる何て おまじない、マジウケる」
「でも、アタシは俊クンと付き合える事になった……」
「ソレは向こうも最初から、理恵の事が好きだったからっしょ。
おまじない何て関係ないっての」
「関係ある!!
「うるさいってば」
「アタシは!! 俊クンが好きだったのは、登美だと思うから……」
「はぁ?」
「だって、仲良いじゃん……いっつも2人でゲームしてるし……
アタシ、毎日 辛かった……」

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