第13話
文字数 721文字
2人は再び3年A組、教室前へ。ドアは開け放たれたままだ。
警教室を覗き込めば、窓際の机に覆い被さる人影。
「……誰?」
弓絵が声をかけるも、返答は無い。
登美は弓絵の背に隠れながらスマホのライトで教室内を照らす。
「だ、誰ッ? 返事しろってば!」
……
……
ライトに当たって浮かび上がるのは、大柄な体系。男子用のジャージ色。
こんな時に机をベッドに休める精神があるものなのか、ただならぬ状況を察して登美は飛び跳ねるように後退する。
「な、何かヤバくナイ? ……弓絵チャン、ヤバイってッ、そいつ、」
「ぅ、うん、」
出来れば何も見なかった事にしたいが、相手が何者なのか頭の片隅で気づき始めている。
「ちょ、、弓絵チャンっ、行かない方がイイってば!」
「……」
苛立つ登美の声を背に、弓絵は胸を殴るような強い鼓動に合わせて前進。
(もしかして……)
間近に立ってライトで照らせば全貌が掴めるだろう。
「俊典、君……」
机に覆い被さって横たわる、俊典の異様な姿。
体はうつ伏せているにも関わらず、何故か顔は上を向いている。
首が真後ろに捩じり折れていたからこそ、理恵は見えにくい暗闇の中でも俊典を“変な形”と感じたのだろう。
口は大きく開き、目は何処でも無い天井の一点を見つめる その顔は、涙と血の渇いた痕で汚れている。
「ぃ、、…やぁあぁあぁあぁ!!」
俊典の死を理解すると同時、溜め込んでいた恐怖が弓絵の口から一気に飛び出す。
登美は弓絵の悲鳴に仰け反り、頭を抱えて廊下に伏せる。
「何々だよ何々だよッ、だからヤメロって言ったのにッ、、フザケんなフザケんな、もぉヤダぁもぉヤダ!!」
南階段にいた筈の俊典は、2階の3年A組に瞬間移動。
この現象は死体にも例外なく働きかけるらしい。