第27話

文字数 1,110文字

(1人ずつ殺される……理由も解からず、私達は殺される……)

 慣れ親しんだ校舎と同じ姿をしているだけの残虐な暗黒世界。
無残な死は平等に訪れる恐怖を確信すると、弓絵はボロボロと泣きながらも床を這い蹲って登美の手を握ると、もう一方の手を義也に伸ばす。

「皆、手、繋いで、……時間が、いつ来るか、分からな――」


ズン!!


!!

 瞬間移動。
弓絵はドサリ!と床に突っ伏す。


「そんな……、」


 2階、空き教室前廊下。


「義也、彗君……」


 手を伸ばすも、義也と繋ぐ事は出来ずに瞬間移動。
然し、登美と理恵とは離れ離れにならずに済んだようだ。

「何で……、手ぇ繋いでたのに何で……?」

 手を繋いでいれば移動は免れると思っていた登美の言葉が虚しい。

「3人じゃ、足らなかったのよ……」

 少なくとも、この空間の転移は3人なら成立してしまう事が分かった。
ならば、義也と彗も保健室にはいないだろう。

 理恵は登美に掴みかかると、激しく体を揺する。

「ホントに! ホントに ちゃんと燃やしたんだよね!? 燃やしたんだよね!?
「っっ、」

 理恵の激しさに、登美は言葉を失う。
答えられない その様子に、理恵は両手を振り上げて登美を何度も殴りつける。

「さっき燃やしたって言ったよね!?
「ぃ、痛いッ、痛いってばッ、」
「燃やしたって言ってよ!! ちゃんと約束通り燃やしたって!!
「理恵チャン、やめてっ、落ち着いてっ、こんな事してないで早く義也達と、」
「こんな事じゃないよ、弓絵チャン! 登美の所為で、登美の所為でアタシ達はッ、」
「ッッ、、違う! 違う!! 私じゃない! 理恵があんなこと言い出すから悪いんじゃんか!!

 弓絵が仲裁に入るも、2人は互いを叩き合う手を止めはしない。
取っ組み合いが始まってしまう。

「やめてッ、やめてッ、
喧嘩なんかしてる暇は無いのっ、次の移動まで1時間しか無いの!」
「登美の所為で俊クンも亜希子も死んだんだ! 全部コイツの所為なんだぁ!!
「知るかよ、そんなの!!
コッチは お前に巻き込まれたんだ! 離れろ、バカ!!
「お願い、やめて! ここには私達以外の誰かがいる! 幽霊だけじゃない! いるの! いるのよ!」

 どこからともなく響く笑い声と足音、何かを引き摺る者、
こんな諍いの最中に鉢合わせる事にでもなれば、ソレこそ逃げ切れないだろう。

 弓絵の警鐘に、振り上げられた理恵の手がピタリと止まる。


「 え ? 」


 間の抜けた声を漏らすと同時、理恵はビタン!! と廊下に顔面を打ち付け、次は滑る様に引き摺られてゆく。


ズズ、、
ザァァァァァァァァ!!

バタバタバタバタバタバタバタ!!
キャハハハハハハハハ!!


 やって来たのだ。あの騒がしい足音と笑い声が。


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