第34話

文字数 1,140文字

「言っても、俺が解いたワケじゃねぇけど。
彗が言うには、向こうとこっちを繋ぐ何らかの鍵ってヤツがある筈なんだって。
それを始末すれば この空間は閉じる」

 “鍵”と言うのは、登美が後始末し損ねた まじないの切れ端に違いない。
弓絵は目を見開く。

「元の世界に戻れるのね!」
「多分な。でもソレが結構 難しい。
いつ向こうに飛べるか分からねぇってのもあるけど、重要なのは、こっちの空間に誰か1人でも残ってたら、鍵を見っけても始末できねぇって事だ」

 登美は瞠若し、困惑を聞かせる。

「な、何で?」
「鍵を始末したと同時に、この空間が閉じるンだぜ? 取り残されたヤツは どうなる?」
「……ココから、出られなくなる?」
「ああ。だから、全員が元の世界に戻ってなきゃらなねンだよ。
運良く誰か1人が向こうに戻れたとしても、鍵を始末すりゃイイってモンじゃねぇって事だ」
「手を繋いで、4人で瞬間移動を繰り返せば良いのよ!」

 弓絵の言葉に、登美は懸念する。


「でもさ……4人で瞬間移動って、出来んの?」


 現状、3人では瞬間移動が成立する事が分かっている。
4人で瞬間移動が可能かは、要確認。

「まず、試してみないと……ね、」
「試してダメだったら、また1時間待つんだよね?」
「ぅ、うん……」
「久松ッ、」
「だからさッ、無事に待てたとして、4人が無理だったら そっからどぉすんの?
高野君からその辺の事、聞いてないのっ?」
「……ぁぁ、」

 彗からは3人が合流できたなら出来る限り瞬間移動を繰り返し、元の世界に戻るように薦められている。
然し、義也にその考えは無い。全員一緒に戻る事。ソレが全てだ。

「取り合えず、4人で試してからじゃねぇと何とも言えねぇよ、」
「駄目だったら2人組になれば、」
「あぁもぉ、弓絵チャン、シッカリしてよぉ……
だからさ、2組に分かれて2組ともが同時に向こうへ戻れんかって聞いてンの!」
「!」

 登美の言葉に弓絵が愕然とすれば、義也はその頭を撫でて気持ちを落ち着かせる。

「久松、今 判らねぇコト言ってもしょうがねぇだろっ?
鍵が何なのかも分かってねぇンだか……
彗は、俺達の中の誰かが知ってる筈だってけど、お前らは何か思い出した事ってねぇのか?」

 義也の問いに、登美は口を噤んで又も俯いてしまう。
やはり、責任の一端が自分にあると言うには気が重く言い難い。
弓絵は渋々 代返する。

「義也、その……鍵が何処にあるのか、もしかしたら分かるかも知れない」
「マヂでか!? 何処だよ!?
「焼却炉、じゃないかと思って……」
「焼却炉? つか、そんなモンどうやって始末すンだよ? 頑丈すぎねぇか」
「そ、そうじゃなくて、焼却炉じゃなっくて、焼却炉の中に鍵があるんじゃないかって、」

 登美の立場を悪くさせない為にも、弓絵は言葉を選んで説明する。
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