第24話

文字数 1,183文字

「何なんだよ……何度も言ってんじゃんよぉ、趣味が同じだけだっつのっ、
ってかさ、あの変な呪文で両想いになれんだったら、亜希子だって西原と付き合えてなきゃ可笑しいじゃんか」
「そうだけどさ……登美は高野クンと どうなの?」
「ホントやめろってば、ソレ言うの!」
「登美と亜希子は告白して無いよね? アタシはしたモン」
「ほっといてよッ、ホントにウザイんですけどッ?」
「ウザイとかじゃ無くてさ、アタシ達は そうゆう事をたって話を、」
「ソレが何で こうなるワケ? 両想いどころか死んでんじゃんか、俊典はさ!」
「登美、酷いよ、そうゆう言い方ぁ……
アタシは、両想いになる おまじないを図書室で見つけただけで、」
「両想いになったら死ぬとは書いてなかったんでしょ!?
考えすぎだって! バカじゃない!?
「ちょっと! さっきから何なのよ、アンタの言い方!」
「うっさいなぁ、まだ何かあんのかよ!?

 登美が顔を背ければ、理恵は力任せに腕を掴んで向き直らせる。


「だからぁ!! ちゃんと捨てたんだよね!? おまじないの時に使った紙!!

「!」


 登美の脳裏に思い出されるのは、机上に置いた四角い紙。
紙面を囲う様に漢数字を書き、その中央に赤色ペンで鳥居のマークを添える。
そして、空いているスペースに夫々 好きな相手の名前を記す。
理恵は熊田俊典、登美は高野彗、亜希子は西原義也と書いている。
用紙を囲って互いに手を繋ぎ、呪文を唱えると、告白が叶う。そんな おまじない。
何処にでも転がっていそうな迷信だが、大概、後始末には注意する様にも伝わっている。


「紙は3等分に切って家に持ち帰って、3日以内に燃やす」

「!」


 改まって言う理恵に、登美は目を反らす。


「そうしないと悪霊がやって来て、関わった人全員が呪い殺されるって……
アタシ、言ったよね? 登美……今日が その3日目だよ」


 理恵から疑いの目が向けられている事に、登美はゴクリと喉を鳴らす。

「……何で私になんの?」
「だから、ちゃんと燃やしたかって聞いてんの」
「だからッ、何で私に聞くのかって!
亜希子がルール破ったかも知んないでしょ!?
「亜希子は怖がりだもん! 帰って直ぐ燃やしたってメールが来たよ!
そうだよね、亜希子! 登美はバカにしてたよね!? 悪霊なんている筈ないって!」
「ちゃんとやたって! フザケんなって! ってか、早くしろよ、亜希子!」

 登美は勢いに任せてビニール紐を引っ張る。
然し、亜希子は云とも寸とも言わない。
そう言えば、先程から登美と理恵が言い争うも、亜希子は一切 口を挟まずにいる。こんな事は珍しい。
2人は波が引く様に静まり、個室に向うビニール紐を見つめる。

 何か奇妙だ。

「亜希子……?」

 チョンチョンと遠慮がちにビニール紐を引くも、やはり音沙汰無い。
2人を驚かせる悪戯のつもりか、登美と理恵は互いに目配せをして ゆっくりと個室に近づく。

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