第2話

文字数 1,241文字

 そこへ段ボールを抱えた金髪頭の西原(にしはら)義也(よしや)と、スーパーの袋を片手にペコリと頭を下げる色白男子=高野(たかの)(すい)が肩を並べて やって来る。

「新しいタイル持って来たぞ。ソレから、差し入れ持参の彗も連行してやった」
「皆、お疲れ様」

 義也は弓絵の傍らに段ボールを置き、彗に手を伸ばす。
彗はスーパーで買って来たドリンク2人分を義也に手渡す阿吽の呼吸。

「弓絵、彗から」
「ありがとう、彗君。今日は……大丈夫なの?」
「うん。1週間も休んだし、僕も卒業制作には参加したいから」

 彗は体が弱い。1週間連続して休むも良くある事。
然し、体調も良くなれば制服をキッチリと着込んで、僅かな時間でも登校する律儀な生徒だ。

 コレが、この中学校の在校生7名。
過疎化が進んだ田舎町の最後の卒業生だ。

 彗はジャージ姿で作業に努めるのクラスメイト達にドリンクを配り終えると、弓絵の隣に腰を下ろす。

「弓絵、僕にも設計図、見せてくれる?」
「はい。彗君、宜しくね」
「うん。任せて」
「ノリノリノリノリ」
「ふふふ! 義也、ノリノリね?」
「ノリだっつの」
「糊ね。はい、どーぞ」

 弓絵・義也・彗の3人は肩を並べて手際良く作業を進める。
仲間同士で1つの事に打ち込む 中学最後の思いで作りを楽しんでいる。
文句は尽きない登美とは言え、皆が手を動かす中、1人だけサボるのは気が引ける。
渋々とミニタイルに手を伸ばせば、亜希子は喜色満面に言う。

「登美チャン、嫌ならムリしないでイイからね? 私が2人分 頑張るから気にしないでね?」

 このタイミングで言われてしまうと嫌味にも聞こえるから、登美は目を細め、フン!と鼻を鳴らすと顔を背ける。

「別に。やんなきゃ終わんないなら やるしかないし」
「そうだよね。登美チャン、高野クンがいると頑張るモンね?」
「はぁ?」

 言いがかりとでも言いたげに、登美は亜希子を藪睨む。
すると、漸くここで登美の機嫌を損ねた事に気づいたのか、亜希子は肩を竦めて狼狽える。

「ぁ、ごめん……だって登美チャン、高野クンのコト好きって言ってたから」
「ッ、」

 登美は背中を反らして彗を見やり、この会話が聞こえてないかを確認。
そして、改めて亜希子を睨みつける。

「そうゆう言い方やめてくれってのッ、そんな事 言った覚えないからッ、」
「ぇ、、だってカッコイイって言ってたし、この前だって、」
「言ったけどッ、そうゆう意味じゃないからッ、……観賞用って事!」
「そぉなんだ……ゴメン、私てっきり……
ぁ、じゃぁもしかして、やっぱり、登美チャンが好きなのは熊田クン?
カノジョの理恵チャンより仲イイもんね」
「違うってッ、友達ってだけだってばッ、、何々だよもぉッ……
そうゆう事、他で絶対 言うなよッ?」
「うん……でも そうだよね。
熊田クンは理恵チャンのカレシになったんだし、観賞用なら高野クンが弓絵チャンを好きでも関係ないモンね?」
「!」

 論点がズレている。
問題の趣旨を理解していない亜希子は、サラリと痛い所を突くド天然。
否、ソレを装っているのかと疑ってしまえる程の毒舌だ。

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