第14話

文字数 936文字

 弓絵はボロボロと涙を流しながら後ずさり、教室の外へ。
廊下の壁に背中をぶつけてズルズルと滑って座り込む。
その摩擦に、貼り付けられていたミニタイルが1つ2つと剥がれ落ちる。

(どうして こんな事に……)

 皆で作り上げていた卒業制作の1粒1粒がココにある。
然し、目の前に広がる暗闇は その思いを否定する様だ。
登美は這い蹲って弓絵に抱き縋ると、駄々を捏ねる子供の様に服を引っ張る。

「逃げなきゃ、ホントにヤバイってっ、何とかして、何とかしてさぁッ、」
「昇降口も、窓も、開かない……
外に出られないのに、どうやって逃げたら良いの……」
「知らないよ! だから聞いてンじゃんよ!」
「私にも分からない……」
「じゃぁどうすンだよぉ!?

 誰かに縋りたい、誰かに責任を押し付けなければ やっていられない。
登美は弓絵の体を揺すって(けしか)ける。

「み、皆を探さなくちゃ……」
「探すって、」
「皆で協力して考えれば きっと……」

 何にせよ、全員が一緒にいるのが1番 安心で安全に違いない。
目的を定める その寸暇、何か手の様な感触が弓絵の足に触れる。


「 ぇ ? 」


 弓絵が俯く様に視線を落とすと、登美も釣られて視界を下げる。
そこに見えるのは、弓絵の足に絡み付く幾つもの黒い手。
ソレを認識すると同時、弓絵の足は無遠慮な力で引っ張られる。
体はビタン!! と うつ伏せに倒され、長い廊下を猛スピードで引き摺られる。


ズ、、
ザアァアァアァアァアァ!!


「いたぃッ、やぁあぁ!! 登美チャン!! 登美チャン!!

 摩擦で手足が擦り剥ける。
引きずられながらも弓絵は必死に手を伸ばし、登美に助けを求める。
然し、登美はブンブン! と頭を振って後ずさる。

「ムリ!! ムリだから!! 絶対ムリだからぁ!!
「いやぁあぁ!! 助けてぇえぇえぇえぇえぇ!!

 登美に弓絵の手を掴んでやれるだけの勇敢さは無い。
そんな事をしては、自分も一緒に連れて行かれてしまう。
弓絵の体はアッと言う間に登美から引き離される。
耳には、初めに聞いた けたたましい足音と笑い声。


バタバタバタバタバタバタバタ!!
キャハハハハハハハハハ!!


(いる……私の周りに……)


バタバタバタバタバタバタバタ!!
ギャハハハハハハハハハ!!


(見えないけど、沢山の人の気配を感じる!!
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