第17話

文字数 1,014文字

「はぁ!? なに考えてんの!?
俊典の死体があるじゃんか!? 気持ち悪くて行けるワケないじゃん!」
「でも、きっと皆1度は教室に戻ろうとするんじゃないかな?
私も そのつもりでいたし……教室の中は無理でも、教室が見える距離にいられれば、誰が戻って来ても見落とさなくて良いと思うの」
「ハァ……とっくに皆、教室から逃げてるよ……
そんだったら昇降口にいた方がマシだってばぁ、」
「そうかも知れないけど……でも、ココからは出られない。
ソレはハッキリしているし、義也なら教室で皆が戻るのを待ちそうだから……」
「西原が見つかればイイってモンでも無いと思うけどね?」
「も、勿論だよっ、、でも闇雲に歩いて体力を消費するのも避けたいよ、」
「僕も、義也ならそう考えると思う。久松サン、付き合って貰えないかな?」
「……ぁぁ、、うん……まぁイイけど、」

 多数決。
冷静沈着な彗が弓絵に同意するのなら、異論を唱えても仕方ない。

 保健室から1番近い階段を上がり、再び2階へ。すると、予想は的中。
3年A組の教室を前に、義也がライトを点滅させて立っている。

「おぉ、やっぱ来たか! つか遅ぇよ!」

 幸いな事に亜希子と理恵も一緒にいるから、やはり義也と言う男は頼もしい。
弓絵・彗・登美が無事に合流した事に、亜希子と理恵は泣きながら駆け寄る。

「ホントにいるし」
「うん、良かったね」
「弓絵、お前ケガしてンのか!?
「あぁ……うん。でも大丈夫。彗君に手当てして貰ったから」
「そっか。彗、お前は? 暗いから顔色とか良く判ンねぇ」
「大丈夫だよ。ソレより……」

 彗は空いている片方の手で義也の腕を掴む。

「何だよ?」
「皆、手を繋いで。揃々 来る」
「揃々って」


ズン!!


「「「「「「!!」」」」」」

 3度目の大きな縦揺れ。
手を繋いでいた事もあり、今度は転ばずに済んだ弓絵は周囲を見回した後に息を飲む。


「移動、してない!」


 手を繋いだ事が功を制したのかも知れない。
誰1人欠ける事なく、3年A組前に居残れている。
彗はスマホのディスプレイを見て頷き、弓絵を義也に預けると教室の中を覗き込む。

「俊典がいない。移動してないのは僕らだけみたいだ」

 教室にある筈の俊典の遺体が消えている。
義也もソレを確認すると、額を抱えて頭を振る。

「俊だけ……? 彗、こりゃどうゆう事だよっ?」
「幾つか解かった事がある。あぁ、大丈夫だよ。今なら手を放していても」

 皆は固く手を握り合っていた手をソロソロと放し、彗を見やる。

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