第16話

文字数 849文字

 保健室も又、電気が点かない。
良い加減 目は暗闇に慣れたが、スマホのライトは必需品。
彗は弓絵をベッドに座らせると、登美と手分けをして棚から消毒液や包帯を取り出す。

「久松サン、ライト向けててくれるかな?」
「うん、」

 彗を前にすると登美はしおらしい。
弓絵を手当てしやすい様に、丁寧に気を配って彗の手元をライトで照らす。

 彗は勉強だけで無く手先も器用だ。
傷口を手際良く消毒し、カーゼを貼って包帯を巻く。
少し多めに巻く事で動きがサポートされるだろう。

「弓絵、痛むだろうけど我慢して」
「ありがとう。ソレより、ぁの、……俊典君の事だけど」
「ごめん、確認する前に移動させられて……」
「うん、……俊典君、教室にいたの」
「本当に?」
「……やっぱり、駄目だった、」
「!」

 言葉を選ぶ弓絵の言わんとする意味に、彗は項垂れる。

「ごめん、弓絵……怖い思いをさせて、、僕が着いていれば……」
「彗君が悪いんじゃないよ、全部この空間が悪いんだよっ、
早く皆と合流しなくちゃ、またバラバラにさせられるっ、」
「バラバラになんだったら集まってもムダじゃん……」

 登美は身も蓋も無い事を言う。
然し、力を合わせなくては危険を回避する事は出来ない様にも思える。

 弓絵は立ち上がり、2人に手を差し出す。


「揺れると飛ばされる」


 唐突な弓絵の言葉に、登美は眉を顰める。

「何ソレ?」

 一方の彗は深く頷く。

「そうだね。2回とも揺れを感じた瞬間に僕らは移動させられた。
手を繋いでいれば、はぐれなくて済むかも知れない」

 彗は弓絵から差し出された手を取る。

「彗君、手、冷たい、、」
「平気だよ。コレでも今日は体調が良い方なんだ」
「……、」

 触れる度に、彗の体温が下がっていくのが分かる。
こうして平静を装っていても、本当は動くのも辛いに違いない。
弓絵が悲し気に俯くから、彗は尚も強がるのだ。

「大丈夫。さ、皆を探しに行こう」
「ぅん、」

 保健室を後に、2人は弓絵の歩幅に合わせて校内を歩く。

「1度、教室へ戻ってみない?」

 弓絵の提案に登美は顔を引き攣らせ、足を止める。

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