第19話

文字数 1,073文字

 6人全員が忙しなく保健室に駆け込むと、義也は彗をベッドに寝かせて布団をかける。

「つか、他に出来る事ってあンのかよ!?

 横にさせてやれば発作は収まるものなのか、義也の焦燥は高まるばかりだ。
弓絵は彗の手を取り、必死に摩る。

「彗君っ、ごめんね、無理させて、ごめんね、、ぅぅぅッ、、」
「弓絵! 泣いてンじゃねぇ!」
「だって、私の所為なのっ、私が彗君に無理させたのっ、」
「尚更 泣くな! ……彗は、そうゆうヤツなんだから!」
「ぅぅぅッ、、」

 眠っているのか意識が無いのか分からないが、彗の瞼は閉じたきり呼吸も浅い。
放っておけば、このまま死んでしまうか知れない。
義也はギリギリと奥歯を噛み慣らし、踵を返す。

「義也っ、何処へ行くの!?
「出口 見つけて来ンだよ!」

 待っていれば助けが来るとも思えない。
彗の為にも1秒でも早く、この暗闇校舎を脱出する必要に迫られている。
然し、その為には危険を冒さなくてはならない。

「駄目! 1人は駄目!」
「ダメでもやるンだよ!!
「だったら私も行く!」
「!」

 弓絵の言葉に義也は狼狽える。
1人でなら どんな危険にも立ち向かうつもりだが、そこへ弓絵を連れて行こうとは思えない。

「か、勘弁しろよ、、つか お前、ケガしてンだろ、、」
「大丈夫。コレくらい平気」
「ヤメときなって、弓絵チャン、また あんな目に遭ったら どうすんの……」

 登美の指摘に弓絵は言葉を詰まらせる。

(分からない…でも、どうするも何も、どうにかするしか無い……)

 室内にいれば安全が確保されるでも無い。
唯一 難を凌ぐ方法があるとすれば、彗が弓絵を助けた時の様にするまでだろう。
全員で無事にココから脱出する為にも覚悟が必要だ。

 弓絵と登美のやり取りに、理恵は不安を高めて喚き出す。

「何? あんな目って!? 登美、何があったの!?
「……さっき、幽霊に襲われた。死ぬトコだったンだよ。
ソレを高野クンが助けたの。あんなのから、そう何度も逃げられるワケないんだって……」
「幽霊!? そんなのいるワケないじゃん! 登美、ウソ言わないで!」
「ウソついてどうすんだっての!」
「でもでも待って、幽霊が出るなら熊田クンが死んだのも分かる気がするっ、
熊田クンは私達の中で1番の力持ちだし、幽霊でもなきゃ……」

 何が起こっても疑えない状況だ。
亜希子が素直に幽霊の存在を受け入れれば、登美は冷静さを取り戻して頷く。

「ま。あんな目に遭えば、俊典だって勝ち目は無いだろうからね」

 個人の力で太刀打ちできる現象で無かったのは、見ていた登美にも判る事。
弓絵が助かったのは奇跡としか言い様が無い。
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