第6話

文字数 845文字

「今、何時だろ?」
「スマホを確認したけど、時間は16時のまま止まってるようだよ。電波も圏外」
「ほ、本当だ……全部 信じられない、」

 見せ合うスマホのディスプレイは共に16時を示し、1秒も進まない。

「兎に角、校舎を出よう。スマホの充電は大丈夫? ライト、点けられる?」
「ぅ、うん、」
「僕の充電器、渡しておくよ。あと2回は使える筈だから」
「でも、」
「念の為だよ」
「ぁ、ありがとう……」

 慣れた校内とは言え、視界が覚束ないでは危険だ。
2人は生徒会室から顔を出すと、スマホのライトを左右に向け、人の気配を確認。
3階廊下には誰もいないようだ。

「弓絵、行こう」
「ぅ、うん、」

 幸いな事に、生徒会室の真横には中央階段がある。
このまま一気に1階まで下りてしまえば昇降口の目の前だ。
弓絵は彗の背に隠れて階段を下り、一先ず2階へ足を下す。
弓絵は注意深く様子を窺うが、2階廊下にも人の姿は見られない。

「弓絵、皆の事は僕が後で探すから、今は先を急ごう」
「……ぅん、」

 1階に向けて階段を降りれば、激しい物音が聞こえてくる。


ガン!! ガン!! ガン!!
ガツンッ、、ガツッ、、ガンガン!!


「今度は何……?」
「昇降口の方からみたいだね」
「な、何か、いるの……?」
「……近づいてみよう。弓絵は僕の後ろに。良いね?」
「ぅ、うん、」

 校舎を出るなら昇降口へ向わなくてはならない。
彗は長息を吐くとゴクリと固唾を飲んでから ゆっくりと前進。
昇降口を間近に足を止めると弓絵を振り返り、“ココで待て”とジェスチャー。
壁の端から昇降口の様子を覗き込む。

「……義也?」

「あぁ? おぉ、彗じゃねぇか! テメェ何処 行ってやがった!?

「って……何やってるんだ、お前は、」

 普段は冷戦沈着な彗も、流石に目を疑う光景。
何を思ってか、義也が消火器を振りかぶって昇降口扉を殴りつけていたのが その理由。
ソレを説明しようと言う所で、弓絵が義也に飛びつく。

「義也! 良かった、無事で!! 本当に良かった!!
「ぉ、おお。何だ、2人一緒か。ちと安心した」
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