遠足の行き先は
文字数 1,023文字
自転車とホウキに乗って、学年遠足の行き先を目指す一行。
ところで遠足ってどこ行くんだったっけ？
……ティールちゃん、もしかして知らなかったの？
悪い!?
私にとって遠足の意味って、授業がなくなることだけであんまり行き先に興味ないのよ！
なんていうか、ティールらしいな。
見えたよ！
あの赤く盛り上がっているところが、目的地の「もみじ山」っ！
もみじ山は一年中紅葉したもみじが見られる山ですわ。
フォンターナ女学院だけでなく、地元の学校では定番の遠足スポットですわね。
すごーい！ 五月なのに本当に赤ーい！
私、こっちに引っ越してきたばかりだから、初めて見たよ！
人間界には一年中紅葉してるもみじってないんですか？
そういえば……この山は魔法を使って一年中紅葉させていますが、なぜもみじは魔法を使わないと一年中紅葉しないのでしょうか？
もみじだけじゃなくて他の植物もなんだけど……植物は葉っぱの緑色でお日さまの光からエネルギーを作ってるの。これを「理科」の言葉で「光合成」っていうんだよ。
お日さまの光は魔力も強いけど、「理科」で使うようなエネルギーもたくさん入ってるんだね。
そうそう！
エレミアちゃん、よくできました！
でも、秋や冬になるとお日さまの光が弱くなるでしょ？
緑色を保つためのエネルギーが、「光合成」でできるエネルギーより大きくなっちゃうの。
だから秋や冬は葉っぱから緑色を消したり、葉っぱをまるごと落としたりするの！
これが紅葉とか落ち葉の仕組みだよ！
それじゃあ、ずっと葉っぱが緑色になれないと、ずっとエネルギーがとれないから……。
確かに魔法なしなら枯れちゃうね。
よーするに、この山はフツーの木が「光合成」で作ってる分のエネルギーを、魔法で木に与えてんだな！
確か、地下を通る龍脈のエネルギーを吸い上げていると聞きましたわ。
ところでティール。ホウキに乗りながら寝ていると落ちますわよ。
ムニャムニャ……はっ!?
でも、なんでそんなに大掛かりな魔法を使って、「もみじ山」を作ったんだろうね？
紅葉が好きだったのかな？
……「魔女狩りで流された血を忘れないように」よ。
……あっ。
……全く、不謹慎な話題は控えてもらいたいものだわ。
……ごめんなさい。
（何よ！
魔女狩りなんて何百年も昔のコトをダシにしてハルカ先生に喧嘩売るアンタの方がフキンシンじゃない！）
（ティール、気持ちはわかるけど抑えるのよ。
他の先生方がいらっしゃる前でネーベンブーラー先生と喧嘩するのはまずいわ）
（……わかってるわよ）
