自転車は簡単じゃない

文字数 966文字

それじゃあ、行くわよ!

一気に上がるから、しっかり捕まっててよね!

うん! お願い!
ハルカとティールを乗せたホウキは、空高く上っていく。
そろそろいいかな……よし!
――先生、それは?
「双眼鏡」だよ!

簡単に説明すると、光の進む方向をレンズで曲げることによって、遠くが見える道具だよ!

仕組みは正直よくわかんないし訊く気もないけど、便利そうね。

それで、クーは見つかりそう?

ちょっと待ってね。

魔法と違って遠くが見えるだけで透視はできないから、木の陰とかに隠れてないといいけど……。

あ! いたよ!

水組の集合場所から後ろの森をまっすぐ入ったところ!

うずくまってるけど……怪我してるのかなぁ?

わかったわ。今そっちに降ろすわね。

――レジスタ先生も合流お願いします!

わかったわ~。気をつけて降りてきてね~。
一方、クーは。
痛たたた……。クソ、水魔法で冷やしてはいるけど、全然痛みが引かねえ……。
その時。草むらがガサガサと大きな音を出して揺れた。
なんだ!? 魔物か!?
魔物じゃありませんよ~。
おーい、クーちゃん大丈夫ー?
まったく、心配かけるんじゃないわよ!
ハルカ先生とレジスタ先生に――ティールも!
あらあら~、足首、派手にくじいちゃってますね~。
すぐ処置しますから、ちょっとじっとしていてくださいね~。
なんで急にいなくなって、勝手に怪我してんのよ!
それは……その……自転車に乗ってみたくて、ちょっと借りてみたら、思ったより難しくて……転んで……。
はぁ!?
悪ィかよ! だって、俺だって「チャリで来た!」って言ってみたかったし!
しかもそんな理由!?
でも、それなら私に一言ちゃんと、「練習したい」って言ってくれればいくらでも手伝ったのに……なんでこっそり?
だって……簡単だと思ったんだ。魔法使わないで乗れるって聞いたから……。
もう! 魔法を使う使わないと、簡単か難しいかは別の問題だよ。
今回は自転車ぐらいだったから良かったけど……人間界にも使い方を間違えたら大きな事故になるような道具はたくさんあるんだからね!
うう……ごめんなさい……。
わかればよろしい!
さ、はやく戻らないと。四人揃ってネーベンブーラー先生に怒られるよー。
げ! それはヤだな!
応急手当は済みましたけど~。まだ走ったりはしない方がいいと思いますよ~。
しょうがないわね。クー! 後ろに乗りなさい!
おうよ!
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

御海ハルカ先生 二十二歳
フォンターナ魔法女学院に今年から赴任してきた新人教師。まだ珍しい魔女と人間のハーフ。
担当教科は、人間界を理解するために今年から魔界の教育カリキュラムに組み込まれた「理科」。
明るく前向きで物怖じしない性格で、生徒たちの人気者。正直すぎるのが玉にキズ。
童顔貧乳で、学校にいるとよく生徒と間違われる。

実は魔界女王の姪で、現在王位継承権第三位。
母は女王の双子の妹だったが、「一年間人間界で魔女であることを知られずに魔法の修行をする」という儀式に失敗して、王位を継承できなかった。
なお父はそのときに母の正体を知ってしまった人間。

エレミア・アグスグストス 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。ハーフフェアリー。
フェアリーの血が濃く、うさ耳と羽を持ち、小柄。
かつて王宮で若くして執事を務めた優秀なナビ妖精の父を持つが、自分自身の成績は中の下程度。
そのため内心コンプレックスを持っていて、自分に自信がもてず、将来の目標も決まらないでいる。
唯一の得意教科は「魔方陣」、一番の苦手教科は「占術」。

クー・アンディ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
人間界ブームに乗って一財産築き上げた成金魔法使いの娘であり、他のクラスメイトのような生粋のお嬢様ではない。
そのため少々がさつなところがあり、周りから浮いてしまうこともしばしば。
要領が良いため成績は悪くなく、得意教科は「魔法史」。「薬草学」の実技は少し苦手。

ティール・ペルシクム 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。魔法騎士の一族だが、現在は名ばかり。
勉強はイマイチだが、スポーツ万能。得意教科は「魔法体術」で苦手教科は「呪文学」。
将来は召喚舞踊のプロを目指しているが、親の理解が得られず反抗期真っ盛り。
大人に対して不信感が強い。

ルードハーネ・ムーズィカ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
女学院近辺を治める伯爵家の長女で、月組のお姉さん的存在。
家からの期待が重く、ストレスを貯めこみすぎるきらいがある。
成績は優秀だが、魔法塾に頼っている面があるので、実技がある科目は苦手で、特に「魔法道具作成」が鬼門。得意科目は「魔界政治学」。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色