出題ミスでどんまいっ
文字数 1,054文字
翌日の五限目、「理科」の授業。
――ハルカ先生、遅くね？
確かに、始業時間からもう五分は経ってるわよね。
職員室で昼寝してるんじゃないかしら？
ティールじゃないんだから……。
というかまず、ネーベンブーラー先生とかも見てる職員室でお昼寝はできないと思うよ……。
みんなー……お待たせー……。
ハルカ先生!? どうしたんですか、昼休み明けなのにずいぶんぐったりしてますけど……。
ううう……実は昨日のテストの件で、エスト校長先生ととネーベンブーラー先生に昼休み中こってり絞られてて……。
お昼ご飯食べる時間もなかったの……。
昨日のテストの件？
あー、やっぱりあの問題……。
そういえば、一問だけ全然解けない問題があったけれど……。
……先生、まさかあの問題……。
ううう、ごめん。私の出題ミスでした……。
ええっ!? 出題ミスなんてあったの？ 全然気づかなかった！
今から出題ミスも含めて、テスト問題の解説をするけど……。
さすがにもう限界だからその前にサンドイッチだけでもお腹に入れさせて……。
わわわっ、先生がすごくふらふらしてるよっ!?
わたくしたちのことは気にしなくていいから、早く食べて食べてっ！
もきゅもきゅ……んぐっ。はー、やっと落ち着いたぁ。
ハルカ先生⋯⋯なんつーか⋯⋯お疲れさま。
じゃあ、気をとりなおして、っと。出題ミスがあった問題は、問三のカッコ二番。
ざらざらした床の上にある箱を引きずって動かす問題だね。
ざらざらした床の上のものを動かすときは、「まさつ力」っていう逆方向の力がはたらくことまでは、みんな大丈夫だよね。
で、その「まさつ力」を計算するのに使う、床のざらざら度をあらわす数字が「まさつ係数」。
このまさつ係数には、
止まっているものを最初に動かそうとするときにかかる力に関わる「静止まさつ係数」と
動いているものを動かし続けるためにかかる力に関わる「動まさつ係数」があるんだけど……。
えっ、そうだっけ？
ティール……そこからわかってなかったの？
ええと、実際に重たいものを押して動かすとき、
最初に動き始めるまではけっこう力が必要だけど、
一回動いちゃったら少し楽になるでしょ？
それは「動まさつ係数」が「静止まさつ係数」より大きいから……って、授業でも説明したんだけど……。
寝てたわ！
ティールちゃん⋯⋯。
それで、カッコの二は箱が動いている問題だから、「動まさつ係数」がわからないといけないんだけど⋯⋯。ごめんっ、「動まさつ係数」を問題文に書き忘れました！
ホントだ、「静止まさつ係数」は書いてあるけど「動まさつ係数」は書いてないわ！
