放課後の質問タイム

文字数 1,014文字

放課後。
(あーあ。結局誕生日プレゼントは渡し損ねちゃうし、クーちゃんもルードハーネちゃんも相談しに来てくれないし……。今日は厄日だよぉー)
ハルカ先生、今度の小テストの範囲なんですけど、質問していいですか?
あ、うん。大丈夫だよ!
えーと、溶岩と竜脈の違いについてなんですけど……。
おう! エレミア! 勉強か?
うん。ちょっと溶岩と竜脈の違いがよくわからなくて……。
竜脈の中で、気だけじゃなくて実際に溶けた岩が流れてるのがマグマで、それが地上に出てきたやつが溶岩だろ?
うん、その通り!
あ、そうだ。ハルカ先生。俺もちょっと「理科」でわかんねーところがあるから質問していいか?
うん、いいけど……(理科の質問より、ルードハーネちゃんとのことを相談してほしいな)
ハルカ先生? どうしたんだ?
ううん! なんでもないよ!
ただ、クーちゃんはさっきの話でも、ちゃんと理解してるからわざわざ質問にくることもないんじゃないかなーと思って。
あー、違う違う! 今までの範囲は大丈夫なんだけど、その……今回は予習してーんだ!
予習までしたいなんてすごいね!
それで、どこの範囲を勉強したいのかな?
うーん、えっと。それじゃあ、稲妻とか雷について教えてくれよー!
そ、それは随分ざっくりだね。
雷って、「理科」では本当に何でも使うから、どこから話していいのか難しいよ……。
何でも?
魔力は魔法道具を使って他の力に変換できるけど、雷の力――「電気」も道具を使って他の力に変換できるんだ。
その上金属の中を通して遠くまで運ぶことができるから、魔法が使えない人間界では、魔力の代わりに使われているといえる力だよ。
そんなに使われてるんですか!?
雷って魔法だとマイナーなイメージだよな。
うん。有名なところだと、火の代わりに明かりに使われたりだとか、乗り物の動力にも使われてるし……。
乗り物の動力!? ユニコーンとかドラゴンとかの生き物じゃなくて、雷自体が動力なのか?
うん、電車って呼ばれる乗り物で……。
そうか……電車ってそういうことだったのか……。
なあ、先生。明日の「理科」の授業、その電車についてやってほしいんだけど、いいかな。
え? ちょうど進化のところが終わったところだから大丈夫だけど……なんで?
えぇ……いや、別に?
ただやっぱり授業でやった方が詳しくわかりそうだなーって……。そんだけ!
うーん……そういうことならいいけど。
(クーちゃん、何かわけがありそうだけど……どうしたのかな?)
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登場人物紹介

御海ハルカ先生 二十二歳
フォンターナ魔法女学院に今年から赴任してきた新人教師。まだ珍しい魔女と人間のハーフ。
担当教科は、人間界を理解するために今年から魔界の教育カリキュラムに組み込まれた「理科」。
明るく前向きで物怖じしない性格で、生徒たちの人気者。正直すぎるのが玉にキズ。
童顔貧乳で、学校にいるとよく生徒と間違われる。

実は魔界女王の姪で、現在王位継承権第三位。
母は女王の双子の妹だったが、「一年間人間界で魔女であることを知られずに魔法の修行をする」という儀式に失敗して、王位を継承できなかった。
なお父はそのときに母の正体を知ってしまった人間。

エレミア・アグスグストス 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。ハーフフェアリー。
フェアリーの血が濃く、うさ耳と羽を持ち、小柄。
かつて王宮で若くして執事を務めた優秀なナビ妖精の父を持つが、自分自身の成績は中の下程度。
そのため内心コンプレックスを持っていて、自分に自信がもてず、将来の目標も決まらないでいる。
唯一の得意教科は「魔方陣」、一番の苦手教科は「占術」。

クー・アンディ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
人間界ブームに乗って一財産築き上げた成金魔法使いの娘であり、他のクラスメイトのような生粋のお嬢様ではない。
そのため少々がさつなところがあり、周りから浮いてしまうこともしばしば。
要領が良いため成績は悪くなく、得意教科は「魔法史」。「薬草学」の実技は少し苦手。

ティール・ペルシクム 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。魔法騎士の一族だが、現在は名ばかり。
勉強はイマイチだが、スポーツ万能。得意教科は「魔法体術」で苦手教科は「呪文学」。
将来は召喚舞踊のプロを目指しているが、親の理解が得られず反抗期真っ盛り。
大人に対して不信感が強い。

ルードハーネ・ムーズィカ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
女学院近辺を治める伯爵家の長女で、月組のお姉さん的存在。
家からの期待が重く、ストレスを貯めこみすぎるきらいがある。
成績は優秀だが、魔法塾に頼っている面があるので、実技がある科目は苦手で、特に「魔法道具作成」が鬼門。得意科目は「魔界政治学」。

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