迷子発生!?

文字数 979文字

ええっ!?
――本当だ。他のクラスの輪に交ざってるわけでもなさそうだし……。
どうしよう、私がちゃんと見てなかったから。
中等学校生にもなって、しかもお弁当時間中に迷子とか、誰も思わないでしょ。
先生のせいじゃないわ。
でも一応探しに行った方がいいのかな……。
もみじ山って、ハイキングコースは安全だけど、少し外れると魔物がいたりするからね……。
ええ。歩いて探すと効率が悪いわ。ホウキで上から探しましょう。
あれ!? 自転車がないよ?
クー……まさか先生の自転車をこっそり持ち出したわね!
うう……ってことはクーちゃん、わざと隠れてるってことだよね。
普通に探して見つかるかなぁ……。
本当はあまり頼りたくなかったけれど……言ってる場合じゃないわね。
方角だけでもネーベンブーラー先生の「占術」で調べてもらいましょう!
あまり頼りたくなくて悪かったわね!
わ! 地獄耳!
誰が地獄耳ですか! あまりに月組が騒がしいから、全部他のクラスまで丸聞こえよ!
……すみません……。
まあまあ。今はそれより、クーさんの安全が第一ですよ~。
ネーベンブーラー先生に方角を調べてもらったら、私とハルカ先生でそちらに向かいましょ~。
レジスタ先生は運動部の顧問だから、もしクーが怪我してても応急手当程度の回復魔法なら使えますね。
心強いですわ。
レジスタ先生の回復魔法には、私もときどきお世話になってるわ……。
――仕方ないわね。
ええと、ここは全体的に白虎の気が強くて、山頂が真北、南から南西にかけて平野、竜脈の流れが北北西から南南東、西よりの風、そしてクー・アンディさんが乙酉の年癸未の月辛酉の日の生まれだから――。
――出たわ。クー・アンディさんは北北東の方角にいるわよ。
北北東!? 山奥に向かってほぼ直進じゃないの!
私とハルカ先生だと~全部探すのは厳しいですね~。
――そうだ! 任せて! 方角さえわかればなんとかなるかも!
方角だけでですか!?
うん。――この中でなら、多分ティールちゃんが一番ホウキを高く飛ばせるよね。
私を後ろに乗せて、できるだけ上に飛んでくれない?
先生! 確かに高いところからならよく見通せるかもしれませんが、でも、その分遠くてよく見えないのでは……!
大丈夫だよ、ルードハーネちゃん。
私にはとっておきの秘策があるんだ!
とっておきの秘策……?
本当はみんなで景色を見て楽しもうと思ってたんだけど――ね。
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登場人物紹介

御海ハルカ先生 二十二歳
フォンターナ魔法女学院に今年から赴任してきた新人教師。まだ珍しい魔女と人間のハーフ。
担当教科は、人間界を理解するために今年から魔界の教育カリキュラムに組み込まれた「理科」。
明るく前向きで物怖じしない性格で、生徒たちの人気者。正直すぎるのが玉にキズ。
童顔貧乳で、学校にいるとよく生徒と間違われる。

実は魔界女王の姪で、現在王位継承権第三位。
母は女王の双子の妹だったが、「一年間人間界で魔女であることを知られずに魔法の修行をする」という儀式に失敗して、王位を継承できなかった。
なお父はそのときに母の正体を知ってしまった人間。

エレミア・アグスグストス 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。ハーフフェアリー。
フェアリーの血が濃く、うさ耳と羽を持ち、小柄。
かつて王宮で若くして執事を務めた優秀なナビ妖精の父を持つが、自分自身の成績は中の下程度。
そのため内心コンプレックスを持っていて、自分に自信がもてず、将来の目標も決まらないでいる。
唯一の得意教科は「魔方陣」、一番の苦手教科は「占術」。

クー・アンディ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
人間界ブームに乗って一財産築き上げた成金魔法使いの娘であり、他のクラスメイトのような生粋のお嬢様ではない。
そのため少々がさつなところがあり、周りから浮いてしまうこともしばしば。
要領が良いため成績は悪くなく、得意教科は「魔法史」。「薬草学」の実技は少し苦手。

ティール・ペルシクム 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。魔法騎士の一族だが、現在は名ばかり。
勉強はイマイチだが、スポーツ万能。得意教科は「魔法体術」で苦手教科は「呪文学」。
将来は召喚舞踊のプロを目指しているが、親の理解が得られず反抗期真っ盛り。
大人に対して不信感が強い。

ルードハーネ・ムーズィカ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
女学院近辺を治める伯爵家の長女で、月組のお姉さん的存在。
家からの期待が重く、ストレスを貯めこみすぎるきらいがある。
成績は優秀だが、魔法塾に頼っている面があるので、実技がある科目は苦手で、特に「魔法道具作成」が鬼門。得意科目は「魔界政治学」。

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