どきどき!入学式

文字数 1,218文字

継承権三位って言ったって、レイニー伯母様も従姉のクラウディア姉様も優秀だし、
私が女王になる可能性なんて万に一つも――。
あなたはそう考えていても、国民にはそう思わない者もいるのです。
本当なら傍系とはいえ王族が王都を離れて、こんな片田舎で教師の真似事など、
あってはならないことなのですよ。
真似事じゃありませんよ! ちゃんと魔法大学を出て、教員免許だってとってるんですから!
とにかく! あなたが王女であることはごく一部だけの秘密。わかりましたね?
は、はい……。
まったく。保護者会等でフォローに入れるように、
せっかくサニー様の元付き人だったラビィ・アグスグストス氏の御令嬢のクラスに配属したのに。
初日からこの調子では先が思いやられます。
うぐ……以後気をつけます……。
その頃、講堂では。
へー、中等学校の講堂って広いのね。
本当ね。初等学校とは全然違うわ。
ところで、ハルカ先生遅くねーか?
他のクラスの先生はみんないるのに……一人だけ職員会議が長引いてるわけないし。
新任らしいし、お手洗いでも行ってそのまま迷ってるんじゃないかしら。
みんなー! お待たせ!
あっ、よかった。間に会ったみたい。
入学式に先生が遅刻しそうになるなんて、どういうことなのよ!
皆さん。静粛に。これよりフォンターナ魔法女学院、入学式を始めます。

新入生のみなさん、フォンターナ魔法女学院へようこそ。
わたくしが学院長のエスト・フォンターナです。
皆さんはこれからこの学院で三年間を過ごすわけですが――
(こういう話ってなんでこう長くてつまんねーんだろうなー)
すやすや……
(ティール寝んの早っ!?)
――さて、みなさん。すでにふくろう新聞などでご存じとは思いますが、
今年から中等学校では新たに、人間界の文化を学ぶ授業を行うこととなりました。
そのため、本校にも新しい先生がやってきました。
「理科」担当の、御海ハルカ先生です。――ハルカ先生、前へ。
はーい! 御海ハルカです。私も先生としては一年生で、今日が入学式です!
みなさんに「理科」の楽しさを知ってもらって、
ちょっとでも人間界に興味を持ってもらえたらいいなって思ってます。
よろしくお願いします!
何が「人間界に興味」よ。
人間なんて私たちを迫害していた種族のことなんて勉強して何になるのかしら。
そんなことに時間を使うより、やはり魔女は魔法をもっと学ぶべきだわ。
うわー……聞こえよがしに言った! 誰よあのオバサン。
一年火組担任の、ネーベンブーラー先生ね。「占術」の先生だったはずよ。
うひゃー、校長先生も怖そうだったけど、こっちはまた違うおっかなさだな。
なんつーか、性格悪そー。
(……「占術」、苦手科目だ。
よりによってあんな怖い先生が苦手科目の担当なんて、ついてないなぁ)
あんなこと言われて……ハルカ先生、気にしないといいけど。
(うわー。ああいうタイプの人って、王族相手だと遠慮して突っかかってこないから、
こういうのって新鮮でいいなぁ)
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登場人物紹介

御海ハルカ先生 二十二歳
フォンターナ魔法女学院に今年から赴任してきた新人教師。まだ珍しい魔女と人間のハーフ。
担当教科は、人間界を理解するために今年から魔界の教育カリキュラムに組み込まれた「理科」。
明るく前向きで物怖じしない性格で、生徒たちの人気者。正直すぎるのが玉にキズ。
童顔貧乳で、学校にいるとよく生徒と間違われる。

実は魔界女王の姪で、現在王位継承権第三位。
母は女王の双子の妹だったが、「一年間人間界で魔女であることを知られずに魔法の修行をする」という儀式に失敗して、王位を継承できなかった。
なお父はそのときに母の正体を知ってしまった人間。

エレミア・アグスグストス 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。ハーフフェアリー。
フェアリーの血が濃く、うさ耳と羽を持ち、小柄。
かつて王宮で若くして執事を務めた優秀なナビ妖精の父を持つが、自分自身の成績は中の下程度。
そのため内心コンプレックスを持っていて、自分に自信がもてず、将来の目標も決まらないでいる。
唯一の得意教科は「魔方陣」、一番の苦手教科は「占術」。

クー・アンディ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
人間界ブームに乗って一財産築き上げた成金魔法使いの娘であり、他のクラスメイトのような生粋のお嬢様ではない。
そのため少々がさつなところがあり、周りから浮いてしまうこともしばしば。
要領が良いため成績は悪くなく、得意教科は「魔法史」。「薬草学」の実技は少し苦手。

ティール・ペルシクム 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。魔法騎士の一族だが、現在は名ばかり。
勉強はイマイチだが、スポーツ万能。得意教科は「魔法体術」で苦手教科は「呪文学」。
将来は召喚舞踊のプロを目指しているが、親の理解が得られず反抗期真っ盛り。
大人に対して不信感が強い。

ルードハーネ・ムーズィカ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
女学院近辺を治める伯爵家の長女で、月組のお姉さん的存在。
家からの期待が重く、ストレスを貯めこみすぎるきらいがある。
成績は優秀だが、魔法塾に頼っている面があるので、実技がある科目は苦手で、特に「魔法道具作成」が鬼門。得意科目は「魔界政治学」。

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