病院にて

文字数 1,008文字

王都病院前。
それじゃあ、うちのお見舞いに付き合わせても悪いし、一回ここで解散しようかしら。
うん、私たち家族はお兄ちゃんのお見舞いに行くから、みんなは見たいところ見てきていいよ。
それじゃあ、私は王都スタジアムに行こうかしら。
ちょっと開場までは間があるけど、適当に周りを見て回るわ。
王都には最近、人間街ってのができたんだろ?
魔界に来てる人間が集まってる町で、人間界のものがいろいろ売ってるんだって。
そこ行ってみよーっと。
私は王宮見学でもしようかしら。レイニー様やサニー様にお会いできるといいのだけれど。
うむ、ホテルの地図は渡してあったな。夕方にホテルで落ち合おう。
病院内。病室。
――うん。念のため他の数値も調べてみたけど問題なし。ポリープは良性でしょう。
それに他の健康状態も問題なし。すぐにでも手術できますよ。
そうですか。ありがとうございます。
でも今日というのは急ですので、明日お願いできますか?
わかりました。
それにしても……タクオ先生は人間界で名医と名高いとお伺いしています。
まさかそのような方がはるばる魔界まで来て僕の治療をしてくださるなんて。
いえいえ。実を言うと僕だって魔界に来る口実ができるのは嬉しいんですよ。
だって魔界にはサニーちゃんが!
ピンクで小さくて、ちょっと不思議ちゃんでかわいくて!
その笑顔は名前のとおりまさに太陽! そんなサニーちゃんが! 魔界に!
サニーちゃんファンクラブ会員番号一番としては、本当は移住したいくらいだけど!
だけどビザが下りない――!
そ……それは……。
(名医なんだけど……タクオ先生のサニー様トークはいつも長いなぁ……)
お話中のところ悪いが、邪魔するぞい。
ハァイ、エミリオ。元気かしら……って、入院してる子に訊くのも変かしらね。
お兄ちゃん! と、隣にいるのが主治医のタクオ先生?
お父さん! お母さん! エレミア!
ああ、ラビィちゃん。こんにちは。そういえば今日は面会の日だったね。
むう。前々から思っておったが、そろそろちゃん付けはやめぬか。
わし、タクオくんよりそこそこ年上じゃぞ?
ああ、ごめんなさい。
でも、僕の中でやっぱりラビィちゃんはやっぱりサニーちゃんのペットのウサちゃんで。
あれから二十五年も経つのに、妖精だなんてまだ実感できなくて。
まあ、サニー様が人間界に留学してたときはそういう設定で同行しとったしのう。
(――そうか。タクオ先生って、人間界でサニー様のご学友だったんだっけ?)
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登場人物紹介

御海ハルカ先生 二十二歳
フォンターナ魔法女学院に今年から赴任してきた新人教師。まだ珍しい魔女と人間のハーフ。
担当教科は、人間界を理解するために今年から魔界の教育カリキュラムに組み込まれた「理科」。
明るく前向きで物怖じしない性格で、生徒たちの人気者。正直すぎるのが玉にキズ。
童顔貧乳で、学校にいるとよく生徒と間違われる。

実は魔界女王の姪で、現在王位継承権第三位。
母は女王の双子の妹だったが、「一年間人間界で魔女であることを知られずに魔法の修行をする」という儀式に失敗して、王位を継承できなかった。
なお父はそのときに母の正体を知ってしまった人間。

エレミア・アグスグストス 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。ハーフフェアリー。
フェアリーの血が濃く、うさ耳と羽を持ち、小柄。
かつて王宮で若くして執事を務めた優秀なナビ妖精の父を持つが、自分自身の成績は中の下程度。
そのため内心コンプレックスを持っていて、自分に自信がもてず、将来の目標も決まらないでいる。
唯一の得意教科は「魔方陣」、一番の苦手教科は「占術」。

クー・アンディ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
人間界ブームに乗って一財産築き上げた成金魔法使いの娘であり、他のクラスメイトのような生粋のお嬢様ではない。
そのため少々がさつなところがあり、周りから浮いてしまうこともしばしば。
要領が良いため成績は悪くなく、得意教科は「魔法史」。「薬草学」の実技は少し苦手。

ティール・ペルシクム 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。魔法騎士の一族だが、現在は名ばかり。
勉強はイマイチだが、スポーツ万能。得意教科は「魔法体術」で苦手教科は「呪文学」。
将来は召喚舞踊のプロを目指しているが、親の理解が得られず反抗期真っ盛り。
大人に対して不信感が強い。

ルードハーネ・ムーズィカ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
女学院近辺を治める伯爵家の長女で、月組のお姉さん的存在。
家からの期待が重く、ストレスを貯めこみすぎるきらいがある。
成績は優秀だが、魔法塾に頼っている面があるので、実技がある科目は苦手で、特に「魔法道具作成」が鬼門。得意科目は「魔界政治学」。

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