習熟度テストの結果は……

文字数 1,134文字

翌日。習熟度テストはつつがなく行われた。
みんなー! お疲れさま!

最後は「理科」の習熟度テストだけど、「理科」は初等学校でやってないし、簡単なアンケートみたいなもの。

今から白紙を配るから、

人間界の何に興味があるかとか、「理科」を勉強するにあたって心配なこととか、

自由に書いてくれるとうれしいな。

採点ないならラクショーだな!
何を書いても百点満点だけど、

一応名目上「テスト」ってことにはなってるから、

名前の書き忘れは赤点扱いになるよ。

そこだけ気をつけてね。

赤点……赤点かぁ。
あー、習熟度テスト、思ったより難しかったよな。
私、全部赤点ギリギリかも。
まあ! ティールが全教科赤点ギリギリ?

ティールは全教科まんべんなくダメだけど……。

全教科ダメで悪かったわね!
ごめんなさい。そういうつもりじゃなかったのだけれど……

でも、ティールが赤点スレスレとなると……

総合点では中の下程度だけど、できる科目とできない科目に結構差があるエレミアは確実に……。
……。
その時、勢い良く教室の前のドアが開かれた。
その通り!
ネーベンブーラー先生!
エレミア・アグスグストスさん!

「占術」三十五点で赤点です!

三十五点……。
あちゃー。五十点合格の三十五点はけっこーキツイな。
再試験は明日。

それで五十点が取れなかったらみっちり補習です!

覚悟しておくように!

明日!?

急すぎでしょ!?

あくまで今の習熟度を見るテストだから、逆にテスト勉強できない日程なのもわかるわ。

それでも……エレミアが可哀想。

はぁ……。補習かぁ……。
まったく。フェアリーのくせに人間界に行ったりする変人の娘だけあって、
魔界の常識がちっともできてないわね。
……!
その日の放課後、夕方六時ごろの教室。
全教科の答案が返ってきたー!
あとは明日返却しやすいように、これを生徒ごとに分けたら今日のお仕事は終わりだね!
あれ、こんな時間まで教室に誰かいるみたい……?
あ。ハルカ先生。
エレミアちゃん!
どうしたの、こんな時間まで残って自習?
そろそろ帰らないとご両親が心配する時間だよ。
あっ、もうこんな時間……!
確かに遊ぶ時間が減るから補習はイヤかもしれないけど、
あくまで今回は「習熟度テスト」だし、わからないところを補うためのテストなんだから、
そんなに無茶して勉強しなくても……。
いえ。確かに補習がイヤなのもあるんですけど……。
そこに関してはできない私も悪いので、ある程度は諦めてました。
でも! ネーベンブーラー先生がパパのことを悪く言ったのだけは絶対に許せません!
パパが人間界でどれだけ苦労して、どれだけたくさんのものを持ち帰ったのか知っているから、
だから……!
そっか。エレミアちゃんはネーベンブーラー先生を見返したいんだね。
いいよ、私も協力する!

一緒にがんばろっ!

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登場人物紹介

御海ハルカ先生 二十二歳
フォンターナ魔法女学院に今年から赴任してきた新人教師。まだ珍しい魔女と人間のハーフ。
担当教科は、人間界を理解するために今年から魔界の教育カリキュラムに組み込まれた「理科」。
明るく前向きで物怖じしない性格で、生徒たちの人気者。正直すぎるのが玉にキズ。
童顔貧乳で、学校にいるとよく生徒と間違われる。

実は魔界女王の姪で、現在王位継承権第三位。
母は女王の双子の妹だったが、「一年間人間界で魔女であることを知られずに魔法の修行をする」という儀式に失敗して、王位を継承できなかった。
なお父はそのときに母の正体を知ってしまった人間。

エレミア・アグスグストス 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。ハーフフェアリー。
フェアリーの血が濃く、うさ耳と羽を持ち、小柄。
かつて王宮で若くして執事を務めた優秀なナビ妖精の父を持つが、自分自身の成績は中の下程度。
そのため内心コンプレックスを持っていて、自分に自信がもてず、将来の目標も決まらないでいる。
唯一の得意教科は「魔方陣」、一番の苦手教科は「占術」。

クー・アンディ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
人間界ブームに乗って一財産築き上げた成金魔法使いの娘であり、他のクラスメイトのような生粋のお嬢様ではない。
そのため少々がさつなところがあり、周りから浮いてしまうこともしばしば。
要領が良いため成績は悪くなく、得意教科は「魔法史」。「薬草学」の実技は少し苦手。

ティール・ペルシクム 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。魔法騎士の一族だが、現在は名ばかり。
勉強はイマイチだが、スポーツ万能。得意教科は「魔法体術」で苦手教科は「呪文学」。
将来は召喚舞踊のプロを目指しているが、親の理解が得られず反抗期真っ盛り。
大人に対して不信感が強い。

ルードハーネ・ムーズィカ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
女学院近辺を治める伯爵家の長女で、月組のお姉さん的存在。
家からの期待が重く、ストレスを貯めこみすぎるきらいがある。
成績は優秀だが、魔法塾に頼っている面があるので、実技がある科目は苦手で、特に「魔法道具作成」が鬼門。得意科目は「魔界政治学」。

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