今日から魔法女学院一年生!

文字数 1,267文字

フォンターナ魔法女学院。魔法界の片田舎にある、そこそこのお嬢様校である。
今日は入学式ということで、新一年生達が少し早めに校門をくぐっていた。
はぁ……。
おっはよーエレミア!
どうしたんだよ入学式から溜息なんてついて。
あ、クーちゃん……。
改めて家に届いた教科書の山を見てたら……
中等魔法学校の勉強って、大変そうだなぁって思っちゃって……。
お前……塾とか通信教育の宣伝みたいなコトで悩んでんのな……
そりゃあクーちゃんは意外と勉強できるからいいけど!
意外と』って何だよ!? 頭よさそうに見えなくて悪かったな!
ご……ごめん。そんなつもりで言ったんじゃ……
でも中等学校って、初等学校に比べて一気に教科が増えるでしょ?
「魔界地理」「魔界史」「魔界政治学」「魔法原理学」「魔界生物学」「魔法道具作成」……。
それに今年から――。
「理科」ですわね。
ルードハーネちゃん! おはよう!
すみませんね。お二人のお話が聞こえてしまって。
なあなあ。親が話してたから今年から中等学校の教科が増えるってのは知ってたけど、
結局その「リカ」ってどんな授業なんだ?
「人間への偏見をなくし、魔界と人間界との交流を盛んにする」という政府目標の一環で教育課程に加えられた、「人間が魔法の代わりに使っている技術体系を学ぶ」授業ですわ。
私たちのおじいちゃんおばあちゃんの世代くらいまでは、「人間は怖いもの」っていうふうに教えられてたらしいけど、
今の王妃様の妹君、サニー様が人間界留学中に、魔女だとばれても迫害されなかったのがきっかけとなって、
もっと人間と友好的な関係を築けるんじゃないか、って考え方が出てきたんだよね。
サニー様って俺のカーチャンより年上じゃねーか!?
そんな大昔に「人間と仲良くしましょう」って意見が出てきて、今更やっと新しい授業ができるって……
大人のやることってなんでそうトロいのかねー。
全くよね! だから大人って信用できないわ。
ティール!? いつから居たんだよ⁉
いつからだっていいでしょ!
……その様子だと、またご両親と喧嘩したのね?
うっさいわね! いい子ちゃんのルードハーネにはわかんないわよっ!
あーあ、初等学校の先生はなんだかんだで親の味方だったし、
新しい担任の先生は、もうちょっと話のわかる先生だといいんだけどなー。
魔法を扱う授業は危険を伴うため、教師の目が行き届くよう、魔法学校の一クラスは五人前後であることが多い。
フォンターナ魔法女学院は「やや少人数制」であり。
エレミア。クー。ルードハーネ。ティール。
以上の四人が一年月組であった。
よーし、教室一番乗り!
……かと思ったらなんだ、先に他の生徒がいるじゃねーか。
えっ。私たちのクラスって四人だけだってパパは言ってたけど?
……もう、酷いなぁ。生徒じゃなくて先生だよ。
私、そんな幼く見えるかなぁ?
えっ、ウソ!? あんたが先生?
初めまして。私は御海ハルカ、れっきとした先生です。
――と言っても、魔法大学を出たばっかりで、先生になったのは今年からなんだけどね。
担当教科は「理科」です。よろしくね!
まぁ……「理科」の先生!?
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登場人物紹介

御海ハルカ先生 二十二歳
フォンターナ魔法女学院に今年から赴任してきた新人教師。まだ珍しい魔女と人間のハーフ。
担当教科は、人間界を理解するために今年から魔界の教育カリキュラムに組み込まれた「理科」。
明るく前向きで物怖じしない性格で、生徒たちの人気者。正直すぎるのが玉にキズ。
童顔貧乳で、学校にいるとよく生徒と間違われる。

実は魔界女王の姪で、現在王位継承権第三位。
母は女王の双子の妹だったが、「一年間人間界で魔女であることを知られずに魔法の修行をする」という儀式に失敗して、王位を継承できなかった。
なお父はそのときに母の正体を知ってしまった人間。

エレミア・アグスグストス 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。ハーフフェアリー。
フェアリーの血が濃く、うさ耳と羽を持ち、小柄。
かつて王宮で若くして執事を務めた優秀なナビ妖精の父を持つが、自分自身の成績は中の下程度。
そのため内心コンプレックスを持っていて、自分に自信がもてず、将来の目標も決まらないでいる。
唯一の得意教科は「魔方陣」、一番の苦手教科は「占術」。

クー・アンディ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
人間界ブームに乗って一財産築き上げた成金魔法使いの娘であり、他のクラスメイトのような生粋のお嬢様ではない。
そのため少々がさつなところがあり、周りから浮いてしまうこともしばしば。
要領が良いため成績は悪くなく、得意教科は「魔法史」。「薬草学」の実技は少し苦手。

ティール・ペルシクム 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。魔法騎士の一族だが、現在は名ばかり。
勉強はイマイチだが、スポーツ万能。得意教科は「魔法体術」で苦手教科は「呪文学」。
将来は召喚舞踊のプロを目指しているが、親の理解が得られず反抗期真っ盛り。
大人に対して不信感が強い。

ルードハーネ・ムーズィカ 十二歳
フォンターナ魔法女学院一年月組。
女学院近辺を治める伯爵家の長女で、月組のお姉さん的存在。
家からの期待が重く、ストレスを貯めこみすぎるきらいがある。
成績は優秀だが、魔法塾に頼っている面があるので、実技がある科目は苦手で、特に「魔法道具作成」が鬼門。得意科目は「魔界政治学」。

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