第36話 旦過市場移転計画

文字数 1,046文字

 脇道に入るとホルモンの店があった。親父さんは話好きな年寄りだった。「北九州市が44億円の予算で、旦過市場移転新設を予定している」という。古いところに良さがある商店街を新築しても多分、人は戻ってこないと思う。
 「土地の持ち主は、だいぶ前の亀井県知事で、1間幅の店舗を作りどうぞ使ってください」と宣伝したという。「昔、神嶽川で魚を下ろし、陸軍の大所帯へ納品していた」「馬車で荷を運び、金を貰うまで、この場所で大勢が待っていた。この先の店は馬小屋だったんだ。何十頭の馬が繋がれていた」。
 「川へでっぱり部分は違法建築で、川の上だから税金もかからない」。「所有者はいろいろ変わっているが登記は出来ない。持ち主は家賃をもらう」。「メインの通りの商店は1間口は8万円、2間口だと16万円する」それでも儲かるらしい。
ホルモン店の親父さん
 「私も40年ここで商売している。11時に店を開き17時には帰る」。「市職員が各店に交渉始めている。我々は営業権があり、それを払って貰えば立ち退く。200万円と提示するが、0が一つ足りん」。「40億予算で1店200万円が限度だ。新聞では直ぐ移転建設というが、我々は何も交渉していない」。「来年から交渉でも始まるが値段が折り合わず。もう10年以上前からもこの移転の話はある」。
 店主も高齢化してる「私は年中無休でここを開け、正月だけは休み」。昔の商売人さんだ。「令和4年4月19日午前2時過ぎ、旦過市場40店超焼く」と新聞の一面と三面に出た。先月、小倉に行ったついでに、市場のアーケードを歩いたばかりだ。全く様子が変わってしまったのではないだろうか。市場通りから奥に入った「新旦過横丁」のエリアらしい。そこは飲食店が建ち並んでいて遅くまで商いしている所だ。ホルモン販売の親父さんの店はアーケードから入って直ぐの所にあるが、被害はなかったでしょうか、お見舞い申しあげます。17時に店を閉められているから、怪我はなかったのでしょう。「今年度から仮店舗への移転交渉に向けた補償交渉に入り、年度内に最初のエリアで解体に着手、27年度の区画整理完了を目指す」と新聞には書いてあった。ホルモンの親父さんは補償金が一桁少ないと言っていたが、予定通りにはいかないみたいだが今後、どうなるのだろう。複雑な権利関係になっているようだし、うまく解決してもらいたい。「北九州の台所」として親しまれ旦過市場と同じような、人情的なレトロを感じる複合商業ビルが完成し、変貌することを祈ります。
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