第1話 導かれて楽しい半生

文字数 767文字

中村文郎先生が亡くなられて10年以上、主濱幸彦先生が亡くなられて3年以上が過ぎようとしている。
想えば、恩師に恵まれた人生だ。小学校では年配の松田先生に「弁論」なるものを指導していただき、学校代表となり、町で3位を賜った。
高校では、主濱先生に国語を、佐藤敏男先生に英語を添削していただき、他にも沢山の先生に可愛がっていただいた。
大学に合格した時は、小学校時代の恩師坂下先生と中学時代の恩師大谷律子先生から、
「おめでとう」と電話をいただいた。
学部生の時、統合失調症に罹患し、6年で卒業したが、アジア史の深沢先生が、
「卒業は出来るの ? 」と1月頃、大講義室の外のロビーで尋ねてくださり
「はい」と答えると、握手を求めてくださった。
専攻科の小池稔先生には将棋を付き合っていただき、今、想えば、五分五分の勝ち負けに収まるよう加減してくださったのではないだろうか。
社会人となり、母校の学部に漸く大学院が新設されたと聞き、働きながら、『哲学小辞典』を1年間で丸々書写するなどして、受験し、修学を許された。
学部生時代、助教授だった中村文郎先生は重鎮となっておられ、小池先生はかなり以前に鬼籍に上られておられた。
中村先生のお宅に金曜日にお邪魔して、奥さんの手料理をご馳走になり、翌日は3人で温泉やレストランに行くなど、2年間、とてもお世話になった。
先生は自分が修了した2年後ぐらいに亡くなられた。研究室を整理する奥さんにお手伝いをして、『哲学中辞典』をいただき、先生の想い出を語り合った。先生は自分のことを待っていてくれたのではないだろうか、そう感じている。
主濱先生や佐藤先生に巡りあい、謦咳に接することができたのは、志望校に不合格だったからである。人生は何が功を奏するかはわからない。あなたの眼前の挫折は将来の好運へと続く出来事であるのかもしれない。
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