第41話 「ひとり悲し」き心

文字数 1,851文字

 恋とはもともとは「孤悲」とも表記し、「ひとり悲し」と想い感ずることであったという。眼の前にない、人や事物を慕わしく思うこと。心ひかれ、それを自分のそばにおきたいと思うこと。
 半世紀以上生を送ってきたが、もてるものといったら。荷物ぐらいの自分には関係のないもの、事実そうであった。
 だが、数年前にあるコミュニティに属し、人々と交流することにより、認識は幾分変化してきた。これから、それが大幅に変わるのか……。多分、心は今まで経験したことのない人生の冒険を望んでいる。
 「恋」は「青春」と言われる時代の者たちの特権であろうか。否、朱夏だろうが白秋だろうが玄冬にいようが、落ちるものである。いや、ある女は「あなたはわたしを恋におとしたの? 」と尋ねると男曰く「いや、ぼくはきみをひろったのさ」
 落ちたものは拾い、壊れた関係は修復出来ぬなら、他の者と新たな関係を築き、人生を謳歌し、想いきり楽しむがよい。
 狭量な所有欲、倫理観、独占欲などは無視し、真に自身の求める幸せを追求し生きて人々の鑑として生きる勇気を持とう。
 世間が非難し、責めるのは、ただ単に「羨ましい」故。自分の損得に関係のない有名人の婚外恋愛や対多数恋愛に大騒ぎするのは自身が不幸せなこと・不満で一杯の生を過ごしていることの表徴。
 人間が生きている原動力には性欲が大いなるパーセンテージを占めている。全存在をかけてのコミュニケーションが性的交わりである。それを一方が望んでいるのに他方が応えないことが人の世に多大な悲劇を生み出している。
 しかも、その応えない方が、自己の所有権や独占権を主張して憚らないことが問題だ。望んでいる相手に応えないのなら、その相手に自由を与えるのが「愛」ではないのか。
 眼の前に常にいて自分の側にいるのに、それぞれが「ひとり悲し」い状態、孤独に慕わしく想うのではなく、二人でいるのに「悲し」い状況にいるのが如何に苦しいことか。それは彼には想像することしか出来ぬのは果たして幸せなのか、不幸なのか──。
 ほんの短い間の言葉の遣り取りと毎日の様に見ている神託を縁(よすが)として待ち続けている男がいる。
 彼は想う。「バカじゃないのか」
 彼女は未だに言葉を返さない。
 三年前、町の酒屋で会った人物は入れ違いの高校の後輩だった。「自分の子供を欲しいとは想わない」そう言った男に、後輩の男性は言った。「生物としておかしい」と。
 今までずっと独りだった。このまま、女が永遠に答えなくても、何も失ったことにはならない、そう自分に言い聞かせた。


以上の作品をある出版社が主宰するコンテストに応募した。
すると、先日、A4判の郵便で講評を賜った。

その内容は、最終選考まで手が届かなかったが、二次選考を通過した作品の中で、一冊の書籍として刊行された際に読者に長く愛される作品になると感じ、この度異例ではあるが講評を送ったとのこと。
編集担当をつけて今後の創作活動のサポートをしたい、このような提案をしていただいた。

電話がほしいとおっしゃられるので、3回目の電話で漸く担当の方とお話をさせていただくことが出来た。
商業出版を視野に、プロの担当者・デザイナーなどをつけ、一年から一年半で8万文字ほどの作品を仕上げ、70年程、その出版社で販売していただけるとのことだった。

紙の本はお金がかかるので、電子出版にして、費用は120万強、三分割支払いで、2月中に45万弱を支払ってほしいとのこと。

当方は、現在、障碍者年金で生活を賄っていて、生活保護者より受給額が少なく、しかも、社会福祉協議会さんに金銭管理を受けている身の上であることを述べた。

障碍者年金が生活保護者の受給額より少ないことを先方はご存知もなく、当方は、何とかして支払うべく、クラウドファンディングやSNSで呼びかけようかなど、様々、考え付いたことをのべたが、「西野さんのように有名な方じゃないとクラウドファンディングはまず、失敗する」と諭された。
それは薄薄感ずいてはいたが、プロの編集者のアドバイスとはどのようなものか、それを受けることにより作品がよくなるなら、という想いが最も強かった。

だが、「金の切れ目が縁の切れ目」。
結局、先方は退散なされた。

しかし、筆者は1分後には
「変な指導を受けて、飼いならされて堪るかい。おらあ、自分の好きなように書くんじゃい。プラトンに編集者なんかついていたか。ウィトゲンシュタインが人の指導を受けて文を書いたかい」
と想い直して、かえってよかったと感謝していた。








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