8. 北の暗殺者
文字数 1,663文字
二人はぞっとしながら走った。危険がすぐ近くまで迫っていた。アベルは急に
二人は追っ手がいる方とは反対側の裏道を、
でもとにかく、少しでもここから遠く離れないと。あの男達・・・敵が追いかけて来るかもしれない。 もし捕まったら、どうなるんだ? そんなこと・・・きっと、すぐに殺されるに決まってる。敵が望んでいるのは、現国王の早い病死とそして、法律で守られている真の次期王位継承者が完全にいなくなること。だから、僕を生かしておく意味はない。奴らは暗殺者なんだ!
そう冷静に考えたアベルは、いよいよ恐ろしくなり、追っ手が気になって後ろを見た。
はっ・・・小さな灯りが近づいてくる・・・!
ランタンの黄色い炎が一つ、ゆらゆらと揺れていた。
一方の二人は、暗い夜道を灯りも点けずに進んでいるため、早く行くことができない。
そこで慌てて道を
すると、次第に何かしゃべっているのが聞こえてきた。
灯りは二人が隠れている場所よりまだ数メートル後ろにあったが、そこからの声は聞くことができた。
「アベル、リマール、どこだ?」
追いかけてきたのは主人だ。
「話がある。大事な話だ。あんた達にとって、とても重要なことだ。信用してくれ。俺は大丈夫だ。どこにいる?」
周りを気にするような声で、主人はそんなことを口にしながらやってくる。
ところが、通り過ぎてくれるのを待っているというのに、彼はふらふらと地面に両膝をついて歩くのを止めてしまった。
「ああ、俺は、なんてバカなことをしようとしたんだ。あの二人はいいヤツだった。なのに・・・」
二人は驚いて顔を見合う。
リマールは思わず立ち上がろうとしたアベルの腕をつかみ、強く下へ引っ張った。
アベルは少し浮かした腰を落とした。
「奥さんは逃がしてくれた。」
「個人的に・・・ってこともある。」
「誰もいないところで、あんなふうに
「僕たちをおびき出す作戦かもしれない。」
二人は息遣いと変わらないようなかすかな声で、ひそひそと言い合った。
「でも・・・。」
「僕が行く。」
意外な返事に、アベルは胸をつかれて黙った。
かたや、リマールが決心した理由はこうだった。
これは賭けだ。もし例の薬を作れる薬剤師だと知られていたら、今出て行って捕まり、奴らのところへ連れて行かれれば、やはり殺されるだろう。でも、主人は大事な話があると言っていた。先ほどのその姿に嘘が無いなら、彼は自分たちにとっても
そうしてリマールは、アベルの