5. 人助け
文字数 2,447文字
翌朝には天気は回復して、太陽に
外へ出たアベルは、リマールの
二人共、食べられる野生の植物について詳しく、たくさんの種類を知っていた。それで今朝は、その
この森はいつ抜けられるだろう。そのあと町まではどれくらいかかるのか。東の方へ抜ける道は行ったことが無かったので、ちょっと見当がつかなかった。食料は大事にしないと。
一時間もしないうちに、そこでできることを済ませた二人は、新たな気持ちで元気よく歩き出した。さあ、今日は行けるだけ行こう、東へ。王都アンダレアへ。早く薬を届けないといけない。
あ、でもその前に、この森で人に会わないと。ルファイアス騎士の弟さん。何人兄弟かも歳も聞いてないけど、末っ子の人。屈強のさすらい戦士と言っていた。
二人は立ち止まり、ルファイアス騎士から、手紙とは別に受け取ったメモを確認した。
森の中には、本流から分かれる川がいくつか通っている。その一つで、滝があるそばに住んでいるらしい。メモには、その滝の名称の下に〝
この広い川沿いの道は真っ直ぐ、目の届く限り続いている。迷わないで行けそうなので、とりあえずここを進もうということになった。そして、分かれ道に出会う度に、足を止めて
何時間も、とにかく同じペースで歩き続けた。昼と午後に二回休憩を取ったが、道はまだ伸びていて、果てしなく続いているようにさえ思える。途中、食べられる木の実を見つけてはもぎ取って、リュックに入れた。
日が暮れてきた。低くなった太陽が、薄い雲に
この調子では、たどり着くのは明日になりそうだ。
二人は、後ろに沈んでいく夕日を時々振り返りながら、いつ道を外れて、今夜の
「助けてくれ・・・!」
声がした。茂みの方から、
「アベル・・・。」
「うん・・・聞こえた。」
二人は一緒に、声があがった方角へ目を向けた。
「誰かいないか・・・!」
「近い。」と、リマール。
「こっちだ。」
二人は地面を
「動けない、誰か助けてくれ!」
また同じ声がして首を向けると、男性が一人、
「いた。ほら、あそこ。」
アベルがそちらを指差して言った。
近づいて見てみると、実際には木の葉が茂っている方の太い枝が、男性の左足首を圧迫している。
「大丈夫ですか。」
リマールが声をかけた。
「ああ、若いの、助けてくれるのか。」
「もちろんです。」
「ありがたい。急に木が倒れてきて。」
「この前の嵐で幹がやられてたのかも。」
アベルが言った。
「いつからこの状態に?」
リマールが、折れた木と男性の両方の様子を
「ええっと・・・30分くらい前からだ。」
リマールが圧迫されている部位をよく見てみると、まだ
男性のそばには斧が落ちていたが、斧で木を叩けば強い衝撃を与えてしまう。そこで今度は、邪魔な周りの小枝を折り、挟まれている足元の土を見てみる。掘って助けることができそうだった。
近くの木によじ登ったリマールは、腰から短剣を抜いて固い枝を切り落とすと、先を斜めに削って少し
幸い、思ったよりもすぐに抜けてくれた。
背後から男性の両脇を抱えてその体を引きずり出すと、リマールはすぐに男性の痛めている足の
「体は大丈夫ですか。倒れてきた時に体も打ったのでは。」
「ああ、大丈夫だ。かすり傷で済んだ。」
「
「ああ・・・ちょっと・・・立てないな・・・。」
「肩を貸しましょう。家まで送ります。」
「すまない。」
「荷物は僕が。」と、アベルも気を
彼らは今いる小道から北へ向かう道に出て、ゆっくりと歩いた。そうしながら互いに名乗り合い、少し会話をした。男性の名はベルゴ。彼は、何をしにどこへ行くのかときいてきたので、二人は、「王都アンダレアへ。」とだけ